判例・裁判例コラム

レジから2000円をとった美容師の普通解雇

東京地裁R6.10.15

個人事業主経営の美容院に勤務する美容師がレジの金銭をとったとして普通解雇された。防犯カメラには美容師が500円硬貨用トレイに右手を入れて500円硬貨を取り出し、これをレジに戻したことがうかがわれない映像あり。美容師は顧客からチップとしてうけとったものであり、チップを従業員が取得することは許されいていたなどと主張した
→裁判所は、顧客から代金額を上回る金額の交付を受けていないことを確認できる場面でも、美容師は4回にわたって合計2000円を不法に領得したと認定。少額であるものの、従業員を雇用して営利事業を営む者において、売上金をレジから複数回にわたって不法に領得した者を雇用し続けることは不可能。美容師の行為は、労働者と使用者の間の信頼関係を破壊するものというほかない。そして、美容師が売上金を不法に領得したことを認めておらず、被害弁償をしていないことも併せ考慮すると、解雇有効と判断。

主治医は復職可能・指定医は回復は一時的で復職不可と診断した場合の復職可否判断事例前のページ

入社前に雇用契約書を作成すれば、試用期間2か月→雇用期間2か月に変更できる?次のページ

ピックアップ記事

  1. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  2. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…
  3. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  4. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  5. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    正社員に寒冷地手当を支給するが契約社員には支給しないことは違法?

    東京地裁R5.7.20日本郵便が正社員には寒冷地手当を支給するが契約…

  2. 判例・裁判例コラム

    懲戒処分としての降格に伴い基本給、役付手当を減額することは有効か?

    東京高裁R3.6.23タイムカードを改ざんした部長を懲戒処分として次…

  3. 判例・裁判例コラム

    懲戒解雇を社内で公示したことが名誉毀損にあたる?

    東京地裁R5.5.24機密情報を漏洩した経理部長代理を懲戒解雇。会社…

  4. 判例・裁判例コラム

    賃金規程に基づいてした給与等級引き下げの効力について判断された事例

    東京高裁H19.2.22年功型賃金から成果主義賃金への変更にあたり、…

  5. 判例・裁判例コラム

    長時間労働者に早く帰宅するように指導しても帰らない場合に会社がとるべき対応

    大阪地裁H20.5.26長時間労働のシステムエンジニアがうつ状態と診…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    残業許可制について厳格な運用をしていたと認められた事例
  2. 判例・裁判例コラム

    日常的な強い叱責がパワハラにはあたらないが安全配慮義務違反ありとされた事例
  3. 判例・裁判例コラム

    初めて就業規則を作ったら“労働条件の不利益変更”!? 7時間半→8時間で会社が負…
  4. 判例・裁判例コラム

    休職者が産業医の面談は圧迫面接だと主張した事案
  5. 判例・裁判例コラム

    売上額に応じて支給される業績給は労基法施行規則19条6号の出来高払制賃金にあたる…
PAGE TOP