判例・裁判例コラム

懲戒解雇の理由はあとで追加できる?

高松高裁R4.5.25
社会福祉法人でパワハラを理由に管理職を懲戒解雇。懲戒解雇通知書に解雇理由として「あなたの職員に対するパワーハラスメント行為(社会福祉法人〇〇第三者委員会からの報告による。)が下記に該当するため。」と記載して、懲戒解雇事由を定めた就業規則の根拠条文を列挙した。第一審の高知地裁は第三者委員会の報告によってもパワハラの事実は認められないとして懲戒解雇を無効と判断。法人は控訴して、部下が強い叱責を受けて突発性難聴となり、入院治療を受けて退職したなどの主張を懲戒解雇理由に追加する主張を行った
→懲戒解雇通知書の記載によれば、法人は第三者委員会が調査報告書においてパワハラに該当すると認定した言動が懲戒解雇事由にあたると判断して懲戒解雇したものと認められる。よって、懲戒解雇の有効性を検討するにあたり、調査報告書に記載のない言動を考慮することはできない。控訴審も懲戒解雇無効と判断。

就業規則に配転条項があっても職種限定契約であるとされた例前のページ

注意指導を受けている最中に、その様子を無断録画した職員の解雇次のページ

ピックアップ記事

  1. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…
  2. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  3. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  4. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
  5. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    35年以上続いた定期昇給を中止できる?

    東京地裁R5.10.30学校法人が35年以上行なってきた4月の定期昇…

  2. 判例・裁判例コラム

    熱中症で亡くなった従業員の遺族からの損害賠償請求

    福岡地裁小倉支部R6.2.13従業員がサウジアラビア出張中の屋外作業…

  3. 判例・裁判例コラム

    就業規則の変更によっては変更されない労働条件の合意

    東京地裁H12.2.8会社が、1年間の有期雇用、賃金は年俸620万円…

  4. 判例・裁判例コラム

    在宅勤務日のさぼり行為が発覚した場合に解雇できる?

    東京地裁R4.11.4モーターボートレースの情報提供サービス等を事業…

  5. 判例・裁判例コラム

    職場内で秘密録音したデータを民事訴訟の証拠として利用できる?

    東京高裁R5.10.25歯科医院に勤務する職員が、理事長が院内で自身…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    クリニックに勤務する麻酔科医の呼び出し待機時間は労働時間?
  2. 判例・裁判例コラム

    売上額に応じて支給される業績給は労基法施行規則19条6号の出来高払制賃金にあたる…
  3. 判例・裁判例コラム

    クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?
  4. 判例・裁判例コラム

    午前9時を始業時刻とする会社で午前8時より前にタイムカードがされていた場合の早出…
  5. 判例・裁判例コラム

    就業規則に休職期間の延長規定を設けた場合の効力
PAGE TOP