東京地裁H23.4.15
私立の中学・高校の社会科教師が①生徒からバレンタインチョコレートをもらい、その返礼としてチョコレートを贈った行為、②ハロウィンで生徒に菓子を配った行為、③職務上の指示に違反して感想の記載を求める問題を出題した行為、④問題修正の指示に従わなかった行為、⑤成績評価過程に関する事実及び所見等を生徒に述べた行為などを理由に懲戒解雇された。また、予備的に普通解雇もされた。
→学院規則上、生徒は先生及び生徒に対して贈り物をしてはならないこと、教職員に対する感謝の表し方は物(花やプレゼント)で表現するのではなく、言葉や態度で表現し、手作りの品、クッキーや自宅庭の花等の贈呈、バレンタインデーでのチョコレートの授受も許されていないこと、これらのことは教師から生徒らに伝達されていることが認められる。①の生徒からバレンタインチョコレートをもらい、その返礼としてチョコレートを贈った行為は、生徒に対して教師への贈り物を禁止する学院規則に生徒とともに違背したこととなるから、服務規律違反といわざるを得ない。また、②のハロウィンの機会に生徒に菓子を配った行為は、生徒の歓心を買うことにもつながる可能性があり、社会科を含む他の教師の教授の在り方に少なからぬ影響を与えることが考えられるから、上司に予め相談等をすべきであるところ、解雇された教師が上司又は他の教師に対してそのような配慮をしたとは認められないから、服務規律に違反したということができる。よって、これらの行為は懲戒事由に該当する。その他③〜⑤の各行為も懲戒事由に該当する。しかし、これらの懲戒事由を理由とする懲戒解雇は余りに重きに過ぎるものといわざるを得ず、その合理性及び相当性を基礎付けるものとは到底認め難い。学校では懲戒の種類としては戒告、減給、停職が定められており、これらの懲戒処分を実施する等して反省を求める機会を与え、改善を促す等の措置を講ずることを検討すべきであり、懲戒解雇又は普通解雇はその後の検討事項である。懲戒解雇も普通解雇も違法と判断。