判例・裁判例コラム

復職可否の診断書が障害年金診断書と矛盾!東京地裁の判断

東京地裁R7.3.14

うつ病で休職していた従業員が、主治医に復職可能と診断された。しかし、会社の復職審査会の審理で治癒と認定されず、休職期間満了による退職扱いとなったため、訴訟を提起
→主治医は、症状が寛解していたこと、リワークプログラムや野鳥の会に参加して生活機能や知的能力が十分に改善していたことのほか、本人に復職意向があり心理的準備が進んでいたことから復職可能と診断したと説明している。しかし、一方で同医師は、復職可能と診断した9か月後に障害者年金の受給に関する「診断書(精神の障害用)」を作成し、さかのぼって1年程度の状況について、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを要する程度にあるとも診断している。このような相矛盾した主治医の診断によって、従業員が復職可能な程度に治癒・寛解していたとまでは認めることはできない。請求認めず。

ポストの裁判例では、復職可否判断の診断書と障害年金の診断書の矛盾が指摘されました。他にも復職可否判断の診断書と傷病手当金の診断書の矛盾が問題になる例があります。矛盾する診断書を同じ主治医が書いているということは、診断書の信用性が疑われる事情の1つであるといえます。
ただ、復職可否判断の診断書では復職可能、同時期の傷病手当金では就労不能と書かれ、矛盾している事案でも、以下の裁判例のように復職可能だったと判断されている裁判例も複数あります。形式的な診断書の矛盾だけで復職を認めないことは適切ではなく、医療照会、生活記録表、産業医面談できちんと回復の程度を確認することが大切です。

代表者からトラブルを問いただされて出勤しなくなった従業員。退職済みと扱ってよい?東京地裁の判断前のページ

威圧的な暴言を吐き、出勤停止処分にも従わない従業員の解雇は有効?岡山地裁の判断次のページ

ピックアップ記事

  1. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  2. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  3. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  4. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
  5. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    ジョブ型雇用の会社でジョブが廃止されたことによる整理解雇は有効?

    東京地裁R4.4.12ジョブ型雇用の外資系金融機関で部門廃止により人…

  2. 判例・裁判例コラム

    セクハラ被害の訴えと休職期間の満了

    東京地裁R6.11.14食品販売会社が精神疾患で休職していた…

  3. 判例・裁判例コラム

    過半数代表選出にあたり無投票者は有効投票にみなすと定めた場合の効力

    松山地裁R5.12.20大学が過半数代表者選出規程に、信任投票で投票…

  4. 判例・裁判例コラム

    労災請求における事業主証明の拒否が問題になった事案

    大阪地裁R5.7.27従業員が労災保険の休業補償給付支給請求書を送付…

  5. 判例・裁判例コラム

    懲戒解雇の通知後に行った予備的普通解雇が無効とされた事案

    東京地裁R3.6.25職務怠慢やハラスメントを理由に従業員を懲戒解雇…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    月額給与76万円→59万円に大幅減額された従業員が訴訟を提起!東京地裁の判断!
  2. 判例・裁判例コラム

    8月1日~9月30日の有給休暇届を8月30日に提出したら9月の有給は認められるか…
  3. 判例・裁判例コラム

    ジョブ型雇用における能力不足解雇
  4. 判例・裁判例コラム

    有給取得取得予定日前日の時季変更権行使
  5. 判例・裁判例コラム

    ジョブ型雇用でポストが失われた場合に使用者に求められる解雇回避措置の内容
PAGE TOP