判例・裁判例コラム

営業担当者の採用失敗の手痛い失敗事例!東京地裁の結論!

東京地裁R7.6.13
法人が超富裕層向けの営業担当者を採用するために、求人広告に、応募の必須条件として、富裕層向けの折衝経験を有する者、富裕層の人脈を持ちかつ人脈構築が得意な業績上位者の者と表示。基本年収1000万円で応募者を募集した。そのうえで、応募者に二次面接で、営業対象となる可能性のある人物を掲載した名簿を作成して提出するよう求めた。そして、40名を記載した名簿を提出した応募者を採用。しかし、その後、この応募者は、40名の名簿掲載者は、知人ではなく声をかけたい人物の候補であると説明し、この応募者に超富裕層を紹介できる人物との人脈などないことが判明。実際に面識のある人物は2名のみであり、ほとんどがインターネットを検索して記載した者であった。法人は採用にあたり虚偽の申告があったとして、3か月の試用期間中にこの応募者を解雇。
→法人の事業内容、営業社員の業務内容、求人広告の記載内容、応募者の履歴書の記載を総合すれば、法人は、中途採用する営業社員に対し、従前の職歴を生かす等して、富裕層との繋がりを有する人物に接触しての営業活動を期待していたことが認められる。しかし、本件の応募者は、二次面接において、名簿に掲載した者に対し積極的なアプローチをしていく旨述べているものの、名簿の掲載者との関係についてどのような説明をしていたかは証拠によっても明らかではない。また、法人も二次面接において、名簿の掲載者に営業を行うことができるかという質問をしたものの、掲載者と応募者との人的関係については確認していない。以上によれば名簿の掲載者との人的関係の存在が雇用契約の必要条件であったとも認められない。そうすると、本件の応募者が富裕層との人脈を持っていなかったとしても、そのことは解雇理由にならない。解雇無効と判断。雇用契約上の地位を確認し、1300万円超のバックペイ支払命令

試用期間中の解雇については以下でも解説していますので併せてご参照ください。
https://kigyobengo.com/media/useful/397.html

中途採用時の遠慮のない突っ込んだ確認の大切さを改めて認識させられる事案です。
この法人も結構しっかりと確認していたともいえます。
単に超富裕層に営業できますか?と聞くのではなく、具体的な営業先の名簿を提出させ、「名簿の掲載者に営業を行うことができるか」という質問まではしてました。
しかし、さらに突っ込んで名簿に掲載された40名との人的関係性を具体的に1名ずつ聞いていくべきでした。 それにしても、応募者側も名簿の提出まで求めた法人の意図がわかっていたはずで、ネット検索してその結果を名簿に載せればよいということではないことは理解できたはずです。それなのにこの結果はつらいなあ、、という気がします。地位確認請求認容でこの後いったいどうすればええねん、、と心配になります。労働者もほんまにこれでいいのか、、と思います。

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