判例・裁判例コラム

退職代行サービスを利用して突如退職を申し出ることは引継ぎ義務違反?

大阪地裁R7.1.27
放課後デイサービスを運営する会社が退職した正社員に対して、引継ぎ義務の不履行があるなどと主張して約1200万円の損害賠償訴訟を提起
→会社は、従業員が退職代行サービスを利用して、突如、退職を申し出たものであり、引継ぎ業務それ自体を放棄した等と主張するが、そもそも退職の意思表示の方法は引継ぎ義務の履行とは無関係。従業員は、退職の意向を伝達した上、児童発達支援管理責任者の任務である個別支援計画の作成につき、更新が必要なものを更新し、保護者の確認を受けるなどの引継ぎ業務を行ったこと、会社の要請に応じた引継ぎ事務を行う意向を会社に伝えていたことが認められ、これらの引継ぎは、従業員の当時の職務に照らし十分に合理的。引継ぎ義務違反はないと判断

退職代行の利用=引き継ぎの放棄
と考えてしまう人がいますが、そうではありません。
そして、引き継ぎ義務の内容は、おおむね①作成中の成果物の引き渡しと②後任者による業務継続に必要な情報の提供ですが、特に②は使用者が具体的に命じることで初めて内容が特定されることが通常です。
そのため、退職代行の利用があったときも、引き継ぐべき内容を具体的に特定して指示することが必要です。

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