東京地裁R7.7.18
会社が従業員を部長から次長に降格。役職手当を月額7万円から6万円に減額した。
→降格が許されるとしても、賃金の減額は、労働契約上の根拠がない限り使用者が一方的に行うことはできない。会社は職能給テーブルを設け、役職や等級ごとに役職手当の支給基準を定めていたが、この職能給テーブルは就業規則や賃金規程に定められたものではなく、取締役間で共有されていたものにすぎず、その内容が従業員に周知されていたとはいえない。したがって、職能給テーブルが就業規則や賃金規程と一体のものになっていたということはできず、役職手当を減額するための根拠としては不十分。また、従業員が降格の際に、役職手当の減額に明示的に異議を述べなかったとしても、減額に同意したということはできない。役職手当の減額は無効と判断。減額分の支払命令。
賃金規程の不備により、降格はされたけれども賃金減額が認められなかった事案です。
裁判例の多くは、従業員の同意のない賃金減額が法的に認められるためには、就業規則(または雇用契約書)において、減額の事由、方法及び減額の幅等について、具体的かつ明確な基準が定められていることが必要であるとしています(東京地判令和5年1月11日、東京地判平成31年1月29日等)。
このような裁判例の考え方からすれば、ポストの事案のような役職手当の支給基準が取締役間で共有されていたにすぎない事案では、減額が認められる余地はありません。
また、ポストの事案の判決は、役職手当の支給基準が従業員に周知されてさえいればよかったかのような判示にも読めますが、単に周知しただけでは、それは労働契約の内容にはなりません。
賃金規程(就業規則)に定めたうえで周知する必要があります。 就業規則に定めた内容を周知すれば労働契約法7条により、労働契約の内容になりますが、就業規則に定めていないものを周知しても労働契約の内容になるわけではありません。
もうすぐ発売の新刊書籍『裁判例に学ぶ就業規則-勝敗を分けた規定と整備の実務』でこの点も解説しています。





