判例・裁判例コラム

人事考課に基づく降格・賃金減額の有効性

東京地裁R4.1.31

地道なテレアポ営業に熱心に取り組まず、営業成績が伸びない職員が、人事考課において4回連続で一番低いランクである「戊」の評価を受けた。会社は基本給を31万8000円から、26万5000円+調整給2万1200円に減額した
→会社は、給与規程において、基本給はグレード給と調整給をあわせたものであるとしたうえで、「グレード給は、職員の職務遂行能力を勘案し、別表のグレード定義によりグレード格付を行い、これに対応するグレード給表による金額を月額として支給する」と定め、さらに「人事考課の結果、必要なときに降給を行うことがある」「降格した場合のグレード給は降格したグレードのグレード給下限額とする」と定めている。このように賃金減額について就業規則に十分な根拠が規定されている。
 そして、考課について会社の裁量に逸脱、濫用があったとはいえない。職員に周知されている内規において「直近4回の考課で戊以下を2回」が降格要件とされており、これには相応に合理性があること、降格要件を満たす場合に降格を見送る例もあるがその数はわずかであること、調整給を支給して激変緩和措置をとっていることからすれば、賃金減額は有効であると判断

ジョブ型雇用における能力不足解雇前のページ

ジョブ型雇用でポストが失われた場合に使用者に求められる解雇回避措置の内容次のページ

ピックアップ記事

  1. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  2. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  3. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  4. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…
  5. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    有期雇用の従業員との退職合意

    東京地裁R6.2.29定年後再雇用された従業員が有期雇用の期間中に会…

  2. 判例・裁判例コラム

    裁量労働制であれば生活リズムが整っていなくても復職できる?

    東京地裁H29.11.30出版社の編集職として裁量労働制で勤務する従…

  3. 判例・裁判例コラム

    休職について説明したにすぎず休職を命じていないとされた事例

    東京地裁H25.1.18バス会社の従業員が通勤中の交通事故で…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    リハビリ勤務の規定をおけばリハビリ勤務を認める義務がある?
  2. 判例・裁判例コラム

    解雇事由調査のための休職命令と賃金支払義務
  3. 判例・裁判例コラム

    有給取得取得予定日前日の時季変更権行使
  4. 判例・裁判例コラム

    始業前の制服への着替え時間が労働時間にあたることが否定された事例
  5. 判例・裁判例コラム

    出勤停止の懲戒処分通知書を従業員が返送した場合の効力
PAGE TOP