判例・裁判例コラム

不当な復職拒否をしてしまった後、これを撤回するために会社がとるべき行動とは?

東京地裁H26.8.20
都内の会社に勤務し、うつ病により休職していた従業員が復職可能と診断されて、会社に復職を求めた。しかし、会社は産業医の意見を根拠に復職不可と判断して、休職期間満了により退職扱いにした。これを不当として従業員が訴訟を提起。訴訟提起の5か月後の会社は退職扱いを撤回し、従業員に復職するように通知し、復職を認めた以上は以後の賃金は出勤しない限り支払わないと主張
→従業員は会社に復職不可と判断された後、経済的な理由により、都内の住居を引き払って、栃木県の実家に戻っていたから、会社から復職するように通知しただけでは従業員が現実に出勤可能になったとはいえない。しかし、通知の翌月である10月16日に、会社は、従業員のために都内の住居を用意し、住居費用及び通勤費用の立替払を申し出て、従業員が出勤するために必要な準備を行う姿勢を示したから、その後は従業員も出勤を可能とするために会社との協議に応じる義務があったというべきである。使用者の労務の受領拒絶により就労が不能となった後、使用者が受領拒絶をやめ、就労を命じた場合においては、労働者も自己の就労が再び可能となるよう努力すべき信義則上の義務があるというべきである。従業員が協議に応じずに出勤していない以上、10月16日の会社による申出から相当期間が経過した10月24日以降は、会社は賃金支払い義務を負わないと判断

製造業で年収800万円の部長の管理監督者性前のページ

会社の要請に反する行動を理由とする降格次のページ

ピックアップ記事

  1. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…
  2. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  3. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  4. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  5. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    就業規則の変更によっては変更されない労働条件の合意

    東京地裁H12.2.8会社が、1年間の有期雇用、賃金は年俸620万円…

  2. 判例・裁判例コラム

    リハビリ勤務の規定をおけばリハビリ勤務を認める義務がある?

    大阪地裁H26.7.18会社が双極性障害等で3回目の休職をしていた休…

  3. 判例・裁判例コラム

    役職手当を固定残業代と定める規定の有効性

    東京地裁R5.10.6整骨院経営会社が給与規程で役割給、役職手当、資…

  4. 判例・裁判例コラム

    部下の上司に対するハラスメントについての懲戒処分

    東京地裁R6.3.21上司に、自身のパソコンの画面を見られて…

  5. 判例・裁判例コラム

    残業代の支払期日

    さいたま地裁H29.4.6就業規則で職員の給与について毎月末日締め当…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    不当な復職拒否をしてしまった後、これを撤回するために会社がとるべき行動とは?
  2. 判例・裁判例コラム

    人事考課に基づく降格・賃金減額の有効性
  3. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6.5.15)

    判例・裁判例コラム

    労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  4. 判例・裁判例コラム

    メンタル休職から復職して21か月後の秋田への転勤命令
  5. 判例・裁判例コラム

    自分自身が納得することを最優先し、会社業務への支障を生じさせる従業員の解雇
PAGE TOP