判例・裁判例コラム

「全部他人のせい」攻撃的言動繰り返す社員。9年指導でも改善せず、ついに解雇は有効か?【東京地裁】

東京地裁R7.8.21
会社が意に沿わない指導等を受けたりした場合に、大声を出す、机を叩く、暴行に及ぶなど攻撃的な態度を取る従業員について、9年の指導を経ても改善しなかったとして普通解雇
→〔1〕従業員は、自己の担当業務と関連しない抽象論やあるべき論に固執して担当業務を円滑に進めることができず、面談等において指導を受けても従わなかったこと
〔2〕「システム利用のFAQ作成」などの平易な課題設定をして、教育担当者を隣に配置する、週1回教育担当との個別ミーティングを行う、議事録や週報の作成を指示しそれについて助言するなどの特別な支援体制が執られ、手厚い指導がされたにもかかわらず、課題達成に必要のない自身の見解に固執して、課題を達成することができなかったこと、
〔3〕フレックスタイム制の下で業務を円滑にするため午前9時を過ぎて出社する場合には事前に連絡するよう指導されていたのに、独自の見解に基づいて事前連絡なく午前9時までに出勤しないことを繰り返し、会社からの注意指導にも従わなかったこと
〔4〕上長に業務に関係しない不適切な内容のメールを繰り返し送信し、その中には、他の社員を誹謗中傷する内容のものも多数あり、上長から繰り返し注意指導を受けたにもかかわらず、メールの送信を止めなかったこと
〔5〕訴訟の本人尋問においても上記のメールが不適切な内容のものとは考えていない旨供述していること が認められる。
しかも、上長らからの注意指導への対応をみても、
〔6〕特別な支援体制が執られ、手厚い指導を受けながら、自らの姿勢や考え方を一切かえりみることなく、自分が担当業務を円滑に遂行できないのは、もっぱら周囲の指導力不足によるものであるとする他責的な言動を繰り返したこと
〔7〕意に沿わない指導等を受けたりした場合に、大声を出す、机を叩く、暴行に及ぶなど、感情的かつ攻撃的な態度を取り、これにより職場の同僚が怖がることとなり、上長が指導を躊躇せざるをえない事態となったこと が認められる。
さらに、
〔8〕合理的な必要がないのに人事部の管理する非公開情報である社員個人のジョブグレード情報を社内のウェブ掲示板に投稿したこと
〔9〕同僚社員から机の整理整頓を指摘された際の会話を会社から貸与されたスマートフォンで無断で録音しその音声データを上長に送ったこと
〔10〕他の社員の外出する姿を会社から貸与されたスマートフォンで無断で撮影し他の社員が飲食に出かける場面であるとしてその写真を上長に送ったこと
が認められる。
会社は、約9年間にわたり、配属や担当業務を変更して業務の水準を下げる一方で、特別の支援体制を執り、不適切な言動に対しても注意指導を繰り返してきた。
会社は雇用を継続するための努力を尽くしたものというべきであり、他方、上記のような従業員の考え方や姿勢が改善する見込みは極めて乏しい。
解雇有効と判断。

結論にはホッとしましたが、9年も対応せざるを得なかったのは、実際に対応した人の気持ちを考えるとなかなかつらいものがありますね。
9年といえば、人の一生でそれなりのウェイトを占める時間です。それをこの対応に費やすことになったのは、指導する側も指導される側もつらい話です(指導する側は9年の間に入れ替わってはいます)。ストレスも強いし、意味も感じにくい仕事のように思います。
意に沿わない指導を受けたりした場合に、大声を出す、机を叩く、暴行に及ぶなど、感情的かつ攻撃的な態度を取り、職場の同僚が怖がり、上長が指導を躊躇せざるをえない事態となったということであり、周囲も上司も大変だったと思います。
長期化したのはこの会社が大企業だったということも影響しています。厳しい解雇規制の不合理さを感じさせる事案です。

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