判例・裁判例コラム

特別退職金1254万提示しても整理解雇はできない?“配置転換の本気度”が問われた判決【東京地裁】

東京地裁R7.8.1
米国企業の子会社で従業員約320名の日本法人が組織変更で約30のポジションを削減。人事評価で下位の従業員に人員削減の対象となったと説明。特別退職金1254万円を提示したが、従業員は退職に応じず、社内の他事業部のポジションや関連会社の空きポジションへの応募の提案にも応じなかったため、整理解雇した。
→会社は解雇前年の売上減少を主張するが、あくまで売上の減少であって、会社の財務状況において人件費率を低下させる必要性の程度は明らかではない。したがって、ポジションの必要性がなくなったという余地があるとしても、相応の負担をしても配置転換が困難であるという事情が必要。この点、会社は、社内の他事業部のポジションへの応募を提案したが、異動は命じていない。また、他の部署で空くポジションもあったところ、これらのポジションが本件従業員に適合する余地がなかったかも疑問である。配置転換が困難だったとはいえず、整理解雇は無効と判断。

配置転換の「提案」ではなく、配置転換命令をだすべき事案でした。
組織変更などにより従業員のポジションが廃止になったときに企業がどう対応すべきかは、そのポジションにある従業員との雇用契約が職務限定契約かどうかにより大きく異なります。
職務が限定された契約の場合、配置転換命令はできない一方、他ポジションへの配置転換の「提案」+労働者が配置転換を承諾しないときは金銭提示して退職勧奨という対応を経ていれば、合意に至らず整理解雇しても、整理解雇有効となる見込みがあります。
一方でポストの事案のように職務が限定されていない契約の場合は、配置転換の提案ではなく、配置転換命令により対応することが必要です。また、単に余剰が生じたに過ぎず、企業に財政難の事情がないときは、原則として退職勧奨や希望退職募集により解決すべきとされ、整理解雇が認められない可能性も高いということになります。

傷害事件を起こす危険な入居者がいるのに夜勤1人で重大事故に。会社の責任は?【大阪地裁】前のページ

ピックアップ記事

  1. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  2. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  3. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…
  4. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  5. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    現勤務先の利益より、元勤務先への義理を優先してよい?

    東京地裁R6.10.23不動産売買を事業とする会社の従業員が…

  2. 判例・裁判例コラム

    自宅待機中の従業員に対する出社命令

    東京地裁R6.4.24嫌いな人物はとことん追い詰める、高圧的な態度で…

  3. 判例・裁判例コラム

    東京地裁R4.12.2

     会社が親展で休職中の従業員宛に届いた健康診断結果を無断で開封した。…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    始業時刻前の出勤は「自主的」だから残業代を払わなくてもよい?東京高裁の判断!
  2. 判例・裁判例コラム

    ジョブ型雇用の期待外れ解雇は有効?東京地裁の判断事例。
  3. 判例・裁判例コラム

    試用期間中に2回の事故を起こし、ミスも改善されない従業員を実働10日で解雇した事…
  4. 判例・裁判例コラム

    第三者名義の口座への給与の支払い
  5. 判例・裁判例コラム

    威圧的な暴言を吐き、出勤停止処分にも従わない従業員の解雇は有効?岡山地裁の判断
PAGE TOP