判例・裁判例コラム

無期雇用者間にも同一労働同一賃金! 仙台高裁「均衡待遇ルールが公序として社会内に確立」 ー賞与・家族手当・住宅手当格差で賠償命令!

仙台高裁R7.9.11  
34歳で採用されて20年以上勤続していた「無期雇用の契約社員」が、同社の正社員との賃金格差が違法であると主張。
・賞与は、3年後に入社しておおむね同じ職務を担当する正社員の4割程度。
・正社員には支給される家族手当、住宅手当は支給されない などの格差があった
→均等・均衡待遇ルールについて行政による政策的な推進が図られ、立法を経て社会に定着してきた経緯などを踏まえると、パートタイム有期雇用労働法8条、9条の改正が施行された令和2年4月以降は、無期雇用の非典型労働者と典型労働者との間の労働条件においても均等・均衡待遇ルールが公序として社会内に確立していると認めるのが相当。
令和2年4月以降は、無期労働者間の労働条件の相違が不合理であってその程度が社会通念上許容されない場合は違法となり、不法行為を構成する。
そして、その判断に当たっては、短時間・有期雇用労働法8条及び9条の規定の趣旨が重要な指標になる。
本件会社では、正社員は、将来の幹部候補で新卒での採用を基本とし、業務上必要があるときは転勤を命じられる。一方、無期契約社員は正社員の補助業務を行う人員で、配属部署や業務内容は、業務上の必要がない限り、採用時に決められた範囲に限定され、同意なく転勤させないとされている。
そして、本件会社の賞与は複合的な性質を有し、将来に向けての労働意欲の向上、人材育成等の趣旨といった性質もある。本件無期契約社員の職務は、一般の正社員と異なり、支所における比較的軽易な事務作業に限られ、配置の変更が制限されており、将来に向けての労働意欲の向上や人材育成は予定されておらず、その枠を超えて人材として活用することができないことなどの事情からすると、正社員との間で賞与にある程度の相違を設けるのは適切であるといえる。
他方、本件会社の賞与は、支給対象期間の企業の業績等を踏まえた対象期間の労務の対価の後払いや功労報奨としての性質も有し、この趣旨は無期契約社員にも妥当する。
これに照らすと、本件無期契約社員についての賞与格差は、本件無期契約社員と職務内容がおおむね同じである比較対象の正社員の賞与の7割を下回る限度で違法。
また、本件会社の家族手当は、生活費の補助としての性質を有するものと解され、本件無期雇用契約社員にも正社員と同じ支給をしないのは違法。
さらに、本件会社の住宅手当については、扶養親族の有無に着目して金額が定められており、生活費の補助としての性質を有するから、無期雇用の契約社員に正社員と同等の支給をしないのは違法。
会社に賠償命令。
※なお、本件では、基本給の格差についても争われましたが、判決は基本給の格差については違法性を認めませんでした。これについてもまたとりあげたいと思います。

判決についての報道
https://www.asahi.com/articles/ASV5X7WZ6V5XULFA013M.html

注目は、「無期雇用の非典型労働者と典型労働者との間の労働条件においても均等・均衡待遇ルールが公序として社会内に確立している」としたその理由付けです。
判決の理由付けの主要部分は下記抜粋のとおりです。
これについては、無期雇用者間で均等・均衡待遇ルールが政策的に推進されたとか、訓示規定である労契法3条2項を除けば無期雇用者間で均等・均衡待遇ルールについて立法があったという事実はないので、本当に「公序として社会内に確立している」といえるか疑問もあるところです。
今後、この争点を他の裁判所がどう判断するか注目されます。
ただ、西川としては、法的なことはともかく、無期雇用者間でも均等・均衡待遇の確保が適切だと思います。このような高裁判決が出た事実も踏まえ、使用者側の立場で取り組みたいと思います。
判決原文から抜粋
均等・均衡待遇ルールについて行政による政策的な推進が図られ、立法を経て社会に定着してきた経緯を踏まえるとともに、無期雇用の嘱託、契約社員は正社員との間で賃金等の労働条件の格差を設けられている点では有期雇用労働者と変わりはなく、また、有期雇用労働者といえども雇止めの制限規定(労働契約法19条)によって労働需要が続く限り契約の更新を合理的に期待できる実態があるのであって、無期雇用の嘱託、契約社員との間で雇止めの有無による待遇の相違を強調するのは相当ではないことに鑑みると、働き方改革関連法による短時間労働者法及び労働契約法の均等・均衡ルールに係る改正が短時間・有期雇用労働法8条及び9条に結実し、その改正部分が施行された令和2年4月1日以降は、無期雇用の非典型労働者と典型労働者との間の労働条件においても同ルールが公序として社会内に確立していると認めるのが相当である。

編集者を入社7年後に総務部へ配転命令!後から就業規則を周知しても配転できずー東京地裁判決前のページ

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