判例・裁判例コラム

どこが間違っているか教えずに“誤字脱字全部見直せ”はパワハラ? 宮崎地裁の判断!

宮崎地裁R8.1.30
課長が勤続7年目の部下に対し、
〔1〕書類の誤字脱字のミスに関し、その箇所を具体的に指摘するのではなく、そのまま書類を返して全てを自分で見直させるという指導を始めた。
また、〔2〕ミス等に対する業務指導に1回当たり二、三十分を掛けたり、2、3日連続して同じミスについて指導を繰り返したりするようになった。
→部下が誤字脱字を繰り返す以上、その書類作成能力を向上させるため、指導の度合いを強めること自体は、社会通念上相当な指導として許容されるべきである。
しかし、本件指導〔1〕は、部下に対し、上司の決裁が得られるまで訂正箇所すら分からず、上司が想定する訂正ができたのか分からない状態で書面を再検討、再提出させるものであり、部下を過度に困惑させるものであって、精神的負担は大きい。
部下の書類作成能力向上の必要性を踏まえても、その精神的負担の大きさに照らせば、本件指導〔1〕を約3か月もの間継続する必要性は乏しい。特に部下が落ち込んだ様子を見せるようになった後もこれをやめず、同様の厳しい指導を継続したというのであるから、部下に与えた精神的負担は相当程度大きかったというべきである。
また、本件指導〔2〕は、部下のミスの内容が書類作成上の不注意による単純なものであったことに照らせば、1回当たりの指導に二、三十分を掛けたり2、3日連続して同じミスについて指導したりする必要性は乏しく、同内容の指摘を執拗に繰り返したり叱責を含むものであったりしたことが窺われる。
これらの指導は、業務上の指導として必要かつ相当な範囲を超え、社会通念上許容された限度を逸脱したものであったというべきであり、パワーハラスメントに当たると判断

昨日の裁判例の別の部分を取り上げました。 また、この事件の全体像については
https://x.com/nobunobuno/status/2058661819666010137?s=20
でまとめていますので、あわせてご参照いただければと思います。

書類の誤字脱字のミスに関し、その箇所を具体的に指摘するのではなく、そのまま書類を返して全てを自分で見直させるという指導がパワハラとされた事案をとりあげました。
こういう指導が一切許されないとはいえないと思います。
この事案では、
・この指導を約3か月間続けた
・落ち込んだ様子を見せるようになった後もやめなかった
ということもあって、パワハラと判断されています。

「もう30歳なんだから」 この“余計な一言” がパワハラに!宮崎地裁判決前のページ

「転勤したくないなら給料15%カット」は違法? 東京地裁の判断!次のページ

ピックアップ記事

  1. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…
  2. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  3. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  4. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
  5. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    復職後も意味不明な言動が続く社員。再休職命令は有効?裁判所の判断!

    大阪地裁R2.7.9 適応障害で休職していた従業員が、主治医に復職可…

  2. 判例・裁判例コラム

    復職可否の診断書が障害年金診断書と矛盾!東京地裁の判断

    東京地裁R7.3.14うつ病で休職していた従業員が、主治医に…

  3. 判例・裁判例コラム

    無期転換後の賃金格差

    有期雇用者について無期雇用者との賃金格差が違法でも、無期転換権を行使…

  4. 判例・裁判例コラム

    送別会帰りのタクシーでのセクハラと会社の使用者責任

    東京地裁R5.5.29上司の送別会の帰りのタクシーで上司が部下の女性…

  5. 判例・裁判例コラム

    派遣会社が派遣社員に競業避止義務を課すことに正当な目的はあるのか?

    東京地裁R4.5.13システムエンジニアを企業に派遣する派遣会社が、…

  6. 判例・裁判例コラム

    役員としての重大な不正を理由に従業員としての退職金を不支給にできる?

    東京地裁R6.1.29学校法人において教授等を務めていた職員が大学の…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    勤務中の読書に対する叱責はパワハラ?東京地裁の判断
  2. 判例・裁判例コラム

    「担当職務の見直しに合わせ、給与の見直しを行う場合がある。見直し幅は、都度決定す…
  3. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.5.15)

    判例・裁判例コラム

    クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  4. 判例・裁判例コラム

    従業員が懲戒通知を“受取拒否”。懲戒の効力は? 東京地裁の判断!
  5. 判例・裁判例コラム

    他の従業員も宛先に入れた叱責メールの中で「言動に目に余るものを感じております」と…
PAGE TOP