判例・裁判例コラム

総合職にのみ社宅利用を認め、一般職には認めないことは間接性差別?

東京地裁R6.5.13
会社は、住居の移転を伴う転勤に応じることができる従業員(総合職)についてのみ、会社が社宅を借り上げて賃料の約8割を会社が負担する社宅制度の利用を認め、一般職の従業員には認めず。一般職従業員はこれが違法な間接性差別であると主張。
→社宅の貸与について、性別以外の事由を要件とする措置であっても、他の性の構成員と比較して一方の性の構成員に相当程度の不利益を与えるものを合理的な理由なく講ずることは、違法とされるべき場合が想定される。この点、直近約10年間に在籍した総合職は男性29名、女性1名であるのに対し、一般職は男性1名、女性5名であった。また、会社による社宅制度の実際の運用は、総合職でありさえすれば、転勤の有無や現実的可能性のいかんを問わず、通勤圏内に自宅を所有しない限り希望すれば適用されるというのが実態であった。その恩恵を受けたのは、1名を除き全て男性であったということになる。措置の内容として、社宅制度を利用できる従業員とそうでない従業員の間で、経済的恩恵の格差はかなり大きい。他方で、転勤の事実やその現実的可能性の有無を問わず社宅制度の適用を認めている運用等に照らすと、会社が主張するような営業職のキャリアシステム上の必要性や、営業職の採用競争における優位性の確保という観点から、社宅制度の利用を総合職に限定する合理性を根拠づけることは困難。会社の社宅制度の運用は雇用分野における男女の均等な待遇を確保するという雇用機会均等法の趣旨に照らし、間接差別に該当する。違法と判断し、会社に約380万円の賠償命令。

パソコンの共有フォルダに保存した就業規則の効力前のページ

退職後6か月間、半径2キロ以内での独立開業を禁止する競業避止規定の効力次のページ

ピックアップ記事

  1. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  2. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  3. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…
  4. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  5. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…

関連記事

  1. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)

    判例・裁判例コラム

    就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)

    事件の概要給与規程において、「業務内容の変更に伴い、その業務…

  2. 判例・裁判例コラム

    サイボウズの記録に基づく残業代請求が認められなかった事例

    東京地裁R7.1.17建設業者で職人の手配や現場の管理などを…

  3. 判例・裁判例コラム

    定年後再雇用 有期雇用の更新時に転勤を命じることの可否

    🚨定年後再雇用社員が更新時に賃下げor遠方勤務。応じなければ雇止め?…

  4. 判例・裁判例コラム

    適応障害による休職からの復職にあたり賃金を減額した事案

    東京地裁R5.12.28適応障害による休職からの復職にあたり、賃金が…

  5. 判例・裁判例コラム

    在宅勤務日のさぼり行為が発覚した場合に解雇できる?

    東京地裁R4.11.4モーターボートレースの情報提供サービス等を事業…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    熱中症で亡くなった従業員の遺族からの損害賠償請求
  2. 判例・裁判例コラム

    諭旨解雇処分を受けて提出した退職届の効力
  3. 判例・裁判例コラム

    出向元が出向社員から出向先での仕事に困難が生じたとして相談された場合に取るべき対…
  4. 判例・裁判例コラム

    外国人技能実習生の指導員について事業場外労働のみなし労働時間制の適用を否定した高…
  5. 判例・裁判例コラム

    ジョブ型雇用の従業員について、担当業務が廃止された場合の解雇の有効性
PAGE TOP