判例・裁判例コラム

雇用契約書に明記した固定残業代の主張が認められなかった事例

東京地裁R5.1.26
雇用契約書で「基本給16万円、職務手当18万円、皆勤手当1万円、職務手当はその全額を時間外・深夜・休日出勤割増分として支給される手当である」と定めた。

→基本給を時給に換算すると925円で、事業部マネージャーというこの従業員の地位・職責に照らして不自然なまでに低額。一方、職務手当は時間外労働割増賃金の月164時間分に達するが、36協定でも月80時間を超える時間外労働は予定されていない。これらの点からは通常の労働時間に対応する賃金が基本給のみと理解するのは無理があり、職務手当には通常の労働時間も含むマネージャーとしての職責の対価が含まれると認めるのが相当。そして、雇用契約書やその他の証拠によっても、職務手当について、通常の労働時間に対する賃金にあたる部分と割増賃金にあたる部分を判別できない。固定残業代が割増賃金に充当されるための要件である判別可能性が認められず、職務手当は割増賃金に充当されないと判断。

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