判例・裁判例コラム

通勤中の電車内で盗撮行為を行った課長を懲戒解雇した事案(控訴審)

名古屋高裁R7.3.25
課長が通勤中の電車内で口を開いたリュックサックに小型カメラを隠して足元におき、女性のスカート内を盗撮しようとした。これが見つかって逮捕されたが、翌日釈放された。課長は女性に被害弁償し、女性は被害届を取り下げたが、会社は課長を懲戒解雇。一審の名古屋地裁は行為時は条例違反にとどまり、刑事事件でも不起訴処分となっており、報道もされていないとして懲戒解雇を無効とした。会社が控訴。
→行為時は条例違反であったが、行為の翌日から法令が施行されて厳罰化がされており、盗撮行為への社会的に非難が高まっている状況にあったといえる。また、本件会社は、業務外の盗撮、児童買春等の事案について原則懲戒解雇する方針を従業員に周知しており、実際に有罪判決の有無、報道の有無にかかわらず懲戒解雇で対応していた。本件は報道されておらず、逮捕による欠勤も2日にとどまるが、郵便事業という会社の事業の公共性を踏まえれば、所属する職員が盗撮行為をしたことで、会社の信用が毀損されることはいうまでもなく、たまたま報道されていない状況であったからといって、会社への信用毀損が生じないといえるものではない。会社が退職金についてその3割相当額を支給したことも踏まえれば、懲戒解雇したことに裁量権の逸脱はなく、懲戒解雇有効と判断

参考:一審判決
https://nishikawa-lawyer.com/447/

セクハラ被害の訴えと休職期間の満了前のページ

出来高払制賃金といえるためには自助努力が反映される賃金であることが必要か?次のページ

ピックアップ記事

  1. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  2. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
  3. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  4. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  5. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    聴覚障害のある職員に対する配慮として会議の筆記サポートが必要?

    東京地裁R7.3.26聴覚障害があり、メガバンクに障害者雇用…

  2. 判例・裁判例コラム

    1年以上服薬せずに日常生活を送っていた休職者の復職可否判断

    名古屋地裁R3.8.23躁うつ病(双極性障害)で休職していた休職者が…

  3. 判例・裁判例コラム

    懲戒処分としての降格に伴い基本給、役付手当を減額することは有効か?

    東京高裁R3.6.23タイムカードを改ざんした部長を懲戒処分として次…

  4. 判例・裁判例コラム

    退職直前にメール約180通を削除した退職者の損害賠償責任

    神戸地裁R7.9.19営業部長兼営業担当取締役が退職直前の3…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    在宅勤務日のさぼり行為が発覚した場合に解雇できる?
  2. 判例・裁判例コラム

    就業規則による民法536条2項の適用排除が認められた例
  3. 判例・裁判例コラム

    年下の女性上司に不満をあらわにし、大声を出して机を叩くなどといった威圧的な態度を…
  4. 判例・裁判例コラム

    住民票記載事項証明書の不提出を理由とする解雇の有効性
  5. 判例・裁判例コラム

    作業中にスズメバチに刺された事故は使用者の安全配慮義務違反?
PAGE TOP