福岡地裁小倉支部R7.3.27
運送会社に勤務する運転手らが合同労組に加入。賃金の未払いについて催告書を送付したり、労働基準監督署に申告したりした。そこで、事業所長は、「労基署に行った3人には残業や休日出張をさせない」と通告し、長距離や休日の乗務を意図的に与えなくなった。これに対し、この3人と合同労組が会社に損害賠償請求
→一般的に、会社には従業員に残業を命ずる義務があるわけではない。しかし、残業手当が従業員の賃金に対して相当の比率を占めている場合、長期間継続して残業を命じられないことは従業員にとって経済的に大きな打撃となるから、どの従業員にも残業を命ずることができる場合に、特定の労働組合の組合員に対して一切残業を命じないことは、合理的な理由がない限り、組合員であるがゆえの差別的「不利益取扱い」であり、同時に、組合組織の弱体化を図るものとして、「支配介入」の不当労働行為にあたる。
本件の運転手らの給与についてみると、給与支給総額の2、3割が長距離乗務及び休日出勤に伴う手当である。また、以前は長距離乗務及び休日出勤は全ての運転手に配分されていたと認められ、また、会社が受注する業務が大幅に減少し、長距離乗務及び休日出勤に関する業務がなくなったとの事情はうかがわれない。そして、団体交渉における要求からも、3人は長距離乗務及び休日出勤を行うことを希望していたと認められる。そうすると、あえて組合員である運転手らに対して時間外労働を命じないという取扱い上の差異を設けたものというほかなく、組合員に対する不利益取扱い、組合に対する支配介入にあたる。組合員と合同労組に対して会社は損害賠償責任を負うと判断