判例・裁判例コラム

結婚の予定を聴くのはハラスメントか?50歳男性社員に対する減給処分。東京地裁の判断!

東京地裁R7.5.29
50歳の男性社員が23歳契約社員に話しかけ、電話番号を交換。ハイキングに誘うなどのショートメールを送った。これに対し、契約社員は、職場で使用するアドレスから、「せっかくのお誘いなのですが、見送らせてください。今後も連絡等ありましたら、こちらのアドレスまでいただけますと幸いです。」等とメール送信。これに対して、男性社員は、「このメッセージがあまり迷惑で無ければいいのですが、憧れていて大事に思っています。」などとショートメッセージを送信した。契約社員は返信しなかった。しかし、10日余り後に再度、男性社員は「他に予定が無ければ明日は一緒に帰りませんか。」と記載したショートメッセージを送信。契約社員は、職場で使用するアドレスから、「今後の連絡は既にお願いさせていただいた通り、私の個人携帯のSMS宛ではなく、職場のメールでいただけますと幸いです。また、個人的なお誘いは遠慮させてください。」等とメール送信。その後、いったん連絡は途絶えたが、数年後、男性社員は、昼食やサイクリングに誘った。契約社員はこれを断った。翌年、男性社員は契約社員が退職するとのうわさを聞き、契約社員に話しかけ、契約社員に結婚なのかを尋ねたが、契約社員は「ちょっとプライベートなので」と答えた。これに対して男性社員は「結婚だったら僕に相談してくれるかな。」「結婚なら、退職する前にうまくやらないといけないからさ。」と言った。契約社員は、ハラスメント相談窓口に相談し、男性社員は減給処分を受けた
→契約社員が、プライベートな事項であることを理由に回答を拒否したところ、男性社員は結婚を理由に退職するつもりであれば、トラブルが生じる可能性があるので、自分に相談するようにと言ったと認められる。男性社員の言動は、結婚の予定の有無、すなわち異性との交際及びその進展状況という極めて私的で性的な意味合いを持つ事実の存否を問い、契約社員がこれを拒むと、自分に明かさない場合には職場で何らかの不利益を被る可能性がある旨を示唆して、回答するよう心理的圧力をかけたと評価できるから、「相手方の望まない性的言動」に準ずる行為であり、かつ「職場環境を悪化させ」るものとして、懲戒事由に該当する。減給処分は相当と判断。ただし、労基法91条による減給の限度額を超えていたため、労基法91条の減給の上限額を超えている部分については、違法・無効と判断。

セクハラについては以下でも解説しています。あわせてご参照ください。
https://youtu.be/TLQ8d1gFtR8

裁判所は、結婚予定の有無を聴き、「結婚なら、退職する前にうまくやらないといけないからさ。」と言った男性社員の言動をセクハラに準ずる行為で懲戒事由にあたると評価しました。
相手が明確に拒絶しているのに、交際を目的としてプライベートな誘いを続けることは、以前から複数の裁判例において、セクハラに当たるとされてきました。本件でもそのような経緯がありましたが、裁判所は、結婚の予定の有無を聴いたことについて、「結婚の予定の有無、すなわち異性との交際及びその進展状況という極めて私的で性的な意味合いを持つ事実の存否を問い、‥これを拒むと、自分に明かさない場合には職場で何らかの不利益を被る可能性がある旨を示唆して、回答するよう心理的圧力をかけたと評価できる」として、懲戒事由にあたると判断している点が注目されます。
なお、男性社員は、法人から弁明の機会を付与された際に、根拠に乏しい事実を挙げて契約社員を非難し、反省する態度を示しませんでした。このことも下から2番目に軽い処分である減給処分が相当とされた理由になっています。
減給処分の上限越えのところも興味深いので、これについては明日取り上げたいと思います。

メールをそのまま転送した部下に対して厳重注意はパワハラ?東京地裁の判断前のページ

なぜ計算に失敗した?減給上限額の計算失敗事例次のページ

ピックアップ記事

  1. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
  2. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  3. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  4. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  5. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    1年単位の変形労働時間制を定める就業規則の不備

    東京高裁R6.5.15引っ越し業者が労使協定を締結して1年単位の変形…

  2. 判例・裁判例コラム

    業務命令に応じない従業員への対応事例

    東京地裁R5.11.15従業員が、会議への参加や業務の引き継ぎ等の業…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    試用期間中に逮捕・勾留された従業員を解雇した事案
  2. 判例・裁判例コラム

    引越し会社で担当件数に応じて支給される業績給は労基法施行規則19条6号の出来高払…
  3. 判例・裁判例コラム

    職場内の盗撮。会社の対応は遅すぎ、被害者と加害者の優先順位を見誤っているとして賠…
  4. 判例・裁判例コラム

    従業員が、日時を特定せずに「副主任からいじめを受けている」との抽象的な報告。この…
  5. 判例・裁判例コラム

    1000円の着服をした運転手の退職手当1200万円超を全額不支給にした事案
PAGE TOP