判例・裁判例コラム

執拗かつ威圧的に相手を責め立て、建設的な議論ができない従業員。 解雇は有効?東京地裁の判断!

東京地裁R7.8.5
会社がデザイナーを雇用したが、2年半後に解雇。
→従業員は、専門性が高くリーダー的役割を持つデザイナーとして採用されたものであること、顧客の要望に沿ったシステムのデザインを行う職種であり、かつ、エンジニアと二人三脚で開発に取り組むことになることから、会社において、高いコミュニケーション能力が求められる立場にあったといえる。
ところが、従業員は、入社直後から、コミュニケーション能力や協調性の問題を指摘され、従業員の言動に照らせばそれは理由があるもので、コミュニケーション能力には明らかな問題があった。
自らが不満に思うことがあると、執拗かつ威圧的に相手を責め立てることを続け、建設的な議論をすることができない傾向が認められる。 会社はこの従業員にPIP(パフォーマンス改善計画)を実施したが、これには必要性があった。
そして、従業員は、PIP通知書において、勤務態度を改めるよう具体的な指示を受けていたにもかかわらず、指示された勤務時間(午前10時から午後7時まで)に勤務せず、業務開始時間及び業務終了時間の報告も十分にせず、その勤務態度は極めて劣悪であった。
なお、会社におけるフレックス制は許可制であり、会社は、従業員に対して、PIP実施期間はフレックス制を適用しない旨命じていたから、従業員は、勤務日においては午前10時から午後7時まで勤務すべき義務があった。
仮に、フレックス制の適用があったとしても、コアタイムに勤務していない日や1日に8時間勤務していない日も多かったのであるから、勤務態度が極めて劣悪であったとの判断は左右されることはない。
これに加えて、従業員は、上司にも明らかに嫌がらせと評価せざるを得ない行為を継続していること、挑発的な言動を繰り返していること、警告書によって明確に問題点を指摘されても、全く改善することはなかったことも考慮すれば、上司や他の従業員に極めて大きな負担を生じさせていることは明らかであり、このような態度は、他の職務に変更したところで改善される見込みがない。PIP実施以降、従業員において十分な成果を上げたと認めるに足りる証拠がないこと、従業員が勤務態度や言動等について、全く反省の態度を示していないこと等も踏まえれば、解雇は有効と判断

いわゆる問題社員トラブルの裁判例ですが、就業規則の作り方の面でも参考になる事案です。 裁判所は、PIP実施期間について、フレックス制からの適用除外を認め、このことも解雇有効の判断につながっているように感じます。 なぜこのような判断になったのか、就業規則にどんな規定が置かれていたのか、一方で、裁判所が「仮に、フレックス制の適用があったとしても、~」と判示しているのはなぜなのか、5月12日の出版記念セミナーでも取り上げてみたいと思います。

事故3回の運転手を「診断書が出るまで乗務停止」。それは事実上の解雇か?東京地裁の判断前のページ

当日欠勤・早退が続く従業員をシフトから排除は違法?→おにぎり店経営会社に賃金支払命令【東京地裁】次のページ

ピックアップ記事

  1. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
  2. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  3. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  4. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  5. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    自宅待機命令後の出社命令に応じない従業員!解雇が無効と判断された理由

    東京地裁R7.4.30理容店を経営する会社が、客からカットの内容につ…

  2. 判例・裁判例コラム

    労災認定されたが損害賠償責任は否定された事例

    大阪地裁R6.9.12派遣社員が、派遣先のマネージャーからの…

  3. 判例・裁判例コラム

    退職勧奨に応じない社員に対する休業命令は適法?東京地裁の判断

    東京地裁R7.9.11 在宅勤務の従業員が、代表者に相談なく、会社の…

  4. 判例・裁判例コラム

    クリニックに勤務する麻酔科医の呼び出し待機時間は労働時間?

    大阪地裁R7.3.24麻酔科医がクリニックから、就業時間外も、クリニ…

  5. 判例・裁判例コラム

    1年以上服薬せずに日常生活を送っていた休職者の復職可否判断

    名古屋地裁R3.8.23躁うつ病(双極性障害)で休職していた休職者が…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    就業規則に休職期間の延長規定を設けた場合の効力
  2. 判例・裁判例コラム

    協調性欠如などの問題がある従業員に年賀状の宛名シール貼りを1日1000枚のペース…
  3. 判例・裁判例コラム

    業務日報で始業・終業時刻を報告させていても、事業場外労働のみなし制を適用できる?…
  4. 判例・裁判例コラム

    メンタルヘルス不調からの復職可否判断。服薬中でも運転業務に復帰可能?大阪地裁の判…
  5. 判例・裁判例コラム

    違法なガールズバーでの副業発覚は解雇理由になるか?
PAGE TOP