判例・裁判例コラム

「解雇じゃない」と言っても無駄…それでも会社が勝った理由とは?

東京地裁R7.8.15
生命保険会社が雇用契約書で
「本人の活動成果等が、営業職員就業規則に定める基準に達しない場合には、選考月の前月末をもって、営業職員としての資格を失い、本契約は終了する。」
と定めた。
営業職員就業規則でも同様の定めあり。
そのうえで、具体的な基準として、
「確直(4)修S3000万円以上、または、確直(4)修S1500万円以上、かつ、確直(4)計上N6件以上」
と定めた。
※用語集に 「確直(●)」とは「確定ベースで直前●カ月という意味」であり、
「修S」とは「修正された保険金額のこと」、
「計上N」とは「保険種類・保険金額等によって、営業職員評価ベースで算定した件数のこと」と定義
会社は入社4か月間の成績が上記基準に満たなかった営業職員に雇用契約終了を通知。
これに対して営業職員が雇用契約終了扱いは、解雇であり、無効であると主張して地位確認請求訴訟を提起。
会社は本件雇用終了扱いは解雇ではなく、解雇権濫用法理は適用されないと反論した。
→本件雇用終了扱いは、状況としては労働者の能力不足による解雇に類似する。
また、基準を達成していない場合であっても、会社は、コロナウイルス感染症が蔓延する状況下等では終了規定を適用しなかったのであるから、雇用契約の終了については、会社による一定の裁量的判断が介在している。 よって、本件雇用終了扱いにも解雇権濫用法理は適用され、客観的に合理的な理由及び社会通念上の相当性を要する。
この点、本件で、職員は、雇用契約書や就業規則の規定、人材育成部長との面談時における基準の達成状況の確認等を通じて、自らの営業成績が上記基準を達成しない場合には雇用契約が終了となることを十分に理解していた。
そして、本件基準は、平均的な営業成績に照らして、特に高い成績を要求するものとはいえず、およそ達成困難なものということもできない。 また、本件基準は規程に定められ、原則としてすべての営業職員に対して一律に適用されるもので、本件の職員に対して恣意的に適用されたという事情はない。
さらに、会社は、どのような営業活動を行うかは営業職員の裁量に委ねつつも、営業活動の指導や支援を行う十分な体制を整えていた。
加えて、本件職員について、保険契約の成約に至らずとも評価すべき日頃の営業活動の成果があったとも認め難い。
また、本件職員は営業職員として雇用されており、それ以外の業務を担当したことはない上、雇用契約や労働条件通知書には配置転換に関する記載はなく、本件職員が配置転換を希望した事情もうかがわれないから、本件雇用終了扱いの前に配置転換をすべきであったともいえない。
雇用契約は終了したと認められると判断。

社員が弁護士をつけた後も本人を指導できる?東京地裁の結論!前のページ

「もう30歳なんだから」 この“余計な一言” がパワハラに!宮崎地裁判決次のページ

ピックアップ記事

  1. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…
  2. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  3. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  4. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  5. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    ハラスメント調査への不服を経営陣らに送り続ける社員の解雇

    東京地裁R6.6.27従業員が人事部に対してハラスメントの被害を申告…

  2. 判例・裁判例コラム

    “休憩60分”が全部労働時間に!?割増賃金の支払命じた東京地裁R7.7.3

    東京地裁R7.7.3首都高速の緊急点検業務に従事していた従業員が割増…

  3. 判例・裁判例コラム

    不備のある定額残業代を就業規則変更によって有効にできる?

    東京地裁R6.2.19運送会社において多数の従業員が未払賃金請求。そ…

  4. 判例・裁判例コラム

    営業活動に他の業者を帯同させた営業社員が減給処分!処分は有効?東京高裁の判断

    東京高裁R7.10.8クレジットカードの加盟店募集業務を事業とする会…

  5. 判例・裁判例コラム

    些細なミスを広範に注意した後の能力不足解雇

    東京地裁R4.2.2職員約900名の法人が新卒者を月給約21…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    大声で非難する発言を理由とするけん責処分
  2. 判例・裁判例コラム

    懲戒処分前の弁明の機会付与に従業員側弁護士を同席させる義務はある?
  3. 判例・裁判例コラム

    従業員が懲戒通知を“受取拒否”。懲戒の効力は? 東京地裁の判断!
  4. 判例・裁判例コラム

    復職審査における産業医と主治医の役割
  5. 判例・裁判例コラム

    給与担当者が情報を他の職員に漏らしたことに対する叱責がパワハラにあたるとされた事…
PAGE TOP