判例・裁判例コラム

カツオの荷抜き行為が発覚した売場係長に対する退職金不支給

静岡地裁R6.5.23
漁業協同組合の売場係長が、約3年間にわたり、水揚げされたカツオを荷抜き(窃取)し、その分の水揚げがなかったことにして、他に転売していたことが発覚。逮捕・起訴された。漁協はこの係長を懲戒解雇し、退職金を不支給とした。
→退職金規程によれば、漁協が従業員に支払う退職金については、賃金の後払い的要素が強いとみることもできる。その場合、退職金全額を不支給とするには、それが当該労働者の永年の勤続の功を抹消してしまうほどの重大な不信行為があることが必要である。この点、係長による荷抜きは、漁協の業務に関して窃盗を行ったというものであり、漁協に対する直接の背信行為であって、また大きく報道されて漁協の名誉及び信用を失墜させた。永年の勤続の功を抹消する重大な不信行為であるといえる。漁協が退職金を不支給としたことが裁量権の逸脱・濫用とはいえないと判断。

パソコンの共有フォルダに保存した就業規則の効力前のページ

退職後6か月間、半径2キロ以内での独立開業を禁止する競業避止規定の効力次のページ

ピックアップ記事

  1. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  2. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  3. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  4. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
  5. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    独自の休職基準を定める規定の効力

    東京地裁R6.9.25就業規則において、就労の可否は専ら使用者が指定…

  2. 判例・裁判例コラム

    35年以上続いた定期昇給を中止できる?

    東京地裁R5.10.30学校法人が35年以上行なってきた4月の定期昇…

  3. 判例・裁判例コラム

    試し勤務の提示を拒否した従業員の復職可否判断

    静岡地裁R6.10.31メンタルヘルス不調者の復職にあたり、…

  4. 判例・裁判例コラム

    ジョブ型雇用における能力不足解雇

    東京地裁H28.6.1海外証券会社の日本法人が営業職を解雇→本件労働…

  5. 判例・裁判例コラム

    会社はどこまで注意喚起すれば安全配慮義務を果たしたといえる?

    福井地裁R3.5.11従業員が工場で使用していた発がん性の薬剤が原因…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    外国人技能実習生の指導員について事業場外労働のみなし労働時間制の適用を否定した高…
  2. 判例・裁判例コラム

    1年単位の変形労働時間制を定める就業規則の不備
  3. 判例・裁判例コラム

    「頭おかしいから。」「水商売やってた人間が。」などと部下を罵倒した支配人を普通解…
  4. 判例・裁判例コラム

    賃金減額について定める給与規程の不備
  5. 判例・裁判例コラム

    在宅勤務日のさぼり行為が発覚した場合に解雇できる?
PAGE TOP