判例・裁判例コラム

全国に点在する労働者の一斉解雇

東京地裁R3.12.21
全国に300店を擁する居酒屋チェーンが、コロナ禍で売上激減。約290店の閉店を決め、従業員を整理解雇。
→人員削減の必要性は高く、解雇回避のために現実に取りうる措置はほとんどなかったと認められる。しかし、会社は全国に点在する労働者を対象とした説明会を開くことが困難であり、時間的余裕もなかったとして、解雇予告通知書送付前に従業員に解雇予告の電話を入れただけでそれ以外に説明・協議をしなかった。説明会を開くことが困難だとしても個別の労働者との間で十分な説明・協議をする機会を設けることが必要。そして、本件原告は首都圏居住で説明したり協議したりする場を設けることが現実的に不可能だったとは考え難い。本件解雇には手続の妥当性が著しく欠けており、解雇無効と判断。

300店もあれば賃料だけでもすごい額でしょうから、コロナ禍での店舗閉鎖は会社に落ち度があるとはいえない気がしますが、裁判所はずいぶん厳しいです。こういう裁判で負けると、仕事もないし、店舗もない状態で地位確認が認容されることになり、企業として、いったいどないしたらええねん、、ということになります。しかし、全員が裁判を起こしてくるわけではないのでそういう苦境から復活する経営者もいます。
本件で、裁判所としては、「説明会を開くことが困難だとしても個別の労働者との間で十分な説明・協議をする機会を設けることが必要」とのことですが、290店舗あるわけです。1店舗5人だとしても、1人20分話すだけで、合計483時間かかる計算になります。これでは毎日12時間説明に使っても40日以上かかります。移動も大変でしょう。しかも、コロナ禍でそれをやれというのは、かなり無茶な話で机上の空論に近いようにも感じます。
とはいえ、本件のような事案で整理解雇せざるを得ないときは、どのようにして説明・協議をしていくかの計画と、説明・協議のためのマンパワー確保が必要です。

パソコンの共有フォルダに保存した就業規則の効力前のページ

退職後6か月間、半径2キロ以内での独立開業を禁止する競業避止規定の効力次のページ

ピックアップ記事

  1. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  2. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
  3. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  4. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  5. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    日常的な強い叱責がパワハラにはあたらないが安全配慮義務違反ありとされた事例

    徳島地裁H30.7.9銀行職員が自殺し、遺族はパワハラ自殺と主張。→…

  2. 判例・裁判例コラム

    労災認定されて休業中の従業員の解雇

    大阪地裁R6.11.29広告宣伝等を事業とする会社の…

  3. 判例・裁判例コラム

    覚醒剤使用で懲戒解雇された従業員の退職金不支給についての判断事例

    東京地裁R5.12.19鉄道会社が覚醒剤使用で有罪判決を受けた車両検…

  4. 判例・裁判例コラム

    ジョブ型雇用の従業員について、担当業務が廃止された場合の解雇の有効性

    東京地裁R6.9.20メガバンクが、職務内容をジャパンストラテジスト…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    年俸を80万円減額する合意は有効?東京地裁の判断!
  2. 判例・裁判例コラム

    事業者は従業員に対する労災支給決定の取り消しを求める訴訟を起こすことができるか?…
  3. 判例・裁判例コラム

    就業規則による民法536条2項の適用排除が認められた例
  4. 判例・裁判例コラム

    暴力・暴言繰り返す社員の解雇
  5. 判例・裁判例コラム

    うつ病での服薬治療等のみを理由とする退職勧奨が違法とされた事案
PAGE TOP