判例・裁判例コラム

調剤薬局で患者の感情を害する言動をする薬剤師を解雇した事案

大阪地裁R6.2.22
調剤薬局が経験者の薬剤師を採用。履歴書には「前職でお客様対応が良く毎月売上げを伸ばし、おほめの言葉をいただきました」と書かれていた。
ところが、試用期間中に〔1〕老眼のために処方せんを読むのに時間を要することが判明し、〔2〕服薬指導において必要な説明をしなかったことや〔3〕女子中学生の患者に水虫の薬が出ている旨を周囲が聞こえる声の大きさで言ってクレームを受けるなどの問題があったため、試用期間を延長。延長後も〔4〕外国籍の患者に、周囲が聞こえる大きさの声で、「おたくさん、日本語分かりますのん」と質問したところ、患者が感情を害して怒ったというトラブルがあり、薬局はこの薬剤師に本採用しない旨を通知。

→上記〔1〕の事情は使用者が採用段階で確認すべき事情であり、これを理由に本採用拒否はできない。〔2〕及び〔3〕の出来事は認められ、これを機に試用期間が延長されたものの、その後生じた上記〔4〕の出来事のほかは、試用期間延長後に適格性を疑わせる出来事はない。試用期間延長後は、患者に対する言動について配慮を欠く言動が認められるにとどまることからすると、これをもって直ちに薬剤師として不適格と判断することは相当でないし、指導や注意を継続したけれども改善しなかったとも認められないから、本採用拒否は無効と判断。

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