東京地裁R7.3.26
聴覚障害があり、メガバンクに障害者雇用枠で採用された女性職員が、全体会議などの際に、常時、要約筆記を提供するなどのサポートがされなかったことは配慮提供義務違反であると主張して銀行に損害賠償請求
→事業主は、障害の特性、担当する職務の内容や性質を含めた具体的状況の下で、過重な負担にならない範囲で、均等な機会・待遇の確保や能力発揮の支障となる事情を避けるという観点から必要な措置を講じる義務を負い、これに違反した場合には、労働契約上の義務の不履行を構成する。
全体会議については、女性職員の業務に関する部分は他の職員が筆記によるサポートを行おうとしており、他の職員が筆記しなかったのは、女性職員の業務に関連しない事項で、自身も理解することができないこともあったものである。これに加え、全体会議の目的が情報の周知や報告にとどまり、報告内容は資料の共有により補完することが可能で、全体会議は期初に年2回開催されるものとおおむね月1回開催されるものでその頻度も多くないことからすると、実際に女性職員の業務の遂行に支障が生じたことはうかがわれない。銀行は、会議を欠席した女性職員に対し、資料やメモを共有するなどして事後に情報を共有していたことが認められることに照らすと、銀行に合理的配慮提供義務違反があったとはいえない。
また、その後、平成29年8月に、銀行は女性職員に対する配慮として、音声を文字情報に返還する音声認識ソフトを導入しており、女性職員はこのソフトの誤認識等についても、他の職員による修正のサポートを受けていた。銀行に合理的配慮提供義務違反があったとはいえないと判断。