大阪高裁R7.10.8
交通事故で頚髄中心性損傷を負って休職していた警察官について、主治医が「職場の環境調整、自動車通勤への配慮、短時間・軽作業などを条件に復職可能」と診断 。
しかし、大阪府警察は本人が人混みや他人との接触に強い不安を訴えていたにもかかわらず、電車による通勤試行を求めた。
警察官は、朝の混雑時間帯に電車で通勤を試行し、他の乗客と接触して全身に電撃痛が生じ、既存の障害が急性増悪。
復職できず、免職処分となった。
→主治医の診断内容からすれば、本件警察官の状態に合わせて職場の環境調整を行い、親指に刺激のある作業を避け、自動車通勤に配慮することにより、復職可能であったと認めるのが相当である。
また、大阪府警察における自動車通勤の取扱要領において、自動車通勤の承認の対象となる職員として、心身に障害を有する職員が挙げられており、この点からも、自動車による通勤を認めることを真摯に検討すべきだった。
本件では、本件警察官の症状からすると、歩行者の飛び出し等があった場合、とっさのハンドル操作や危険回避行動等が可能かなどの安全上の懸念がある旨指摘され、電車での通勤試行が行われた。
しかし、本件警察官が、交通事故後、本件通勤試行までの間に自動車運転について安全上の懸念があったことをうかがわせる具体的なエピソードはない。
障害者雇用促進法に規定する合理的配慮義務の履行という観点や自動車通勤の取扱要領を踏まえ、自動車通勤が不相当といえるかどうかについて慎重に検討し、必要に応じて主治医に対して運転上の懸念や交通事故を引き起こす可能性等を聴取するなどの配慮が求められていたというべきである。ところが、安全上の懸念をことさら強調し、上記のような配慮を何ら行うことなく電車での通勤試行を行わせたことは、妥当性・相当性を欠く。
分限免職処分は、条件付きではあるものの復職が可能な状態であった本件警察官に対し、妥当性及び相当性を欠いた電車での通勤試行が行われた結果、症状が急性増悪したという事情を適切に考慮することなく行われたものであり、違法であると判断
企業側から見たポイント
休職からの復職を検討する段階で、通勤訓練等について主治医から通勤方法に関する指示を受けることがあります。
本件は、このような場面で、主治医の指示と異なる電車通勤をさせたことが問題になりました。 このような使用者の対応は、手指の可動域制限という本人の症状を踏まえた自動車運転についての安全上の懸念によるものだったようです。
しかし、そのような懸念をもったのであれば、自動車運転について安全上の懸念はないのか、と主治医に確認したうえで判断すべきでした。
そのような手順を踏まずに、使用者の判断で主治医の指示と異なる通勤訓練をさせたことに問題があったといえるでしょう。






