東京地裁R6.12.10
外資系証券会社で私傷病による精神疾患を発症した従業員が休職を経て復職。しかし、復職後も十分な就業ができず、会社は再度休職事由に該当したと判断。就業規則では「復職後同一または関連した傷病により再び休職をとるときは、すでに取得した休職期間を差し引いた残余の日数の私傷病休職を付与するものとする。」と規定があり、すでに取得済みの休職期間を差し引くと休職期間が残っていなかったため、会社は休職期間満了による自然退職とした。これに対し、従業員は従業員の職務内容は限定されておらず、配属部の変更をすれば就労可能だったから、休職事由にはあたらないなどと主張。訴訟を提起して労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めた。
→〔1〕会社は、中途採用においては、求人する特定のポジションに求められる必要な知識、技術及び経験等を有している人材を採用しており、いわゆるジェネラリストの中途採用は行っていないこと、〔2〕本件の従業員の採用においても、ユーザーサポート業務を行う者を採用するため、職務記述書を転職エージェントに交付して募集を行っており、本件の従業員は、これを前提に応募していること、〔3〕本件の従業員は、平成18年以降に勤務した5社において、いずれもIT業務に従事しており、採用時の職務経歴書においても、IT関係の能力を有していることを強調して、自らの強みをアピールしていたこと、〔4〕雇用契約書には職務記述書が添付されていること等の事情を総合すれば、就業規則に配置転換等に関する一般的な規定があり、雇用契約書にも「就業規則に従い貴殿の職務を随時変更することができる」とあること等を踏まえても、本件の従業員が担当する業務を職務記述書に記載されたユーザーサポート業務に限定する旨の合意があったものと認められる。そうすると、休職事由の有無も、ユーザーサポート業務の内容を前提に判断すれば足りる。精神疾患のため、ユーザーサポート業務について、債務の本旨に従った労務の提供はできなかったとして、休職事由ありと判断。雇用終了を認めた。