大阪地裁R7.9.26
IT開発業務に従事している従業員が、コロナ禍で在宅勤務となっていたが、開始時に「はじめます」、終了時に「終わります。」と一言だけのメール連絡することがほとんどとなり、週報にもパワハラに対する不満の記載しかせず、上司からの出社要請にも応じず、業務状況を把握できない状態となった。そこで、会社は書面により、出社をすること及び体調不良の事情がある場合は診断書を提出することを求めるとともに、応じなければ在宅勤務の適用を取り消すため欠勤扱いとなると通知。従業員が応じなかったため、在宅勤務許可を取り消した。その後、従業員は、「適応障害 特定の状況下では自律神経症状のため、勤務困難となるが、それ以外では継続勤務可能」と記載された診断書を提出。会社は主治医から事情を聞く必要があり、産業医を交えて面談を実施したいと通知したが、従業員は応じず、「体調が悪化しているので、しばらく休業します。」とのメールを送信。会社は在宅勤務取消後も出社しなかったことなどを理由に10日間の出勤停止処分をした。しかし、従業員はさらに別の医師の診断書を送付。傷病名は「うつ病」とされ、「上司からのパワーハラスメントが原因で出勤しての労務ができない状態(ただし在宅勤務であれば就労は可能である)」と記載されていた。会社は、診断書を作成した医師との面談への同意や会社での従業員との面談を求める旨の書面を従業員に送付したが、従業員は受け取りを拒否。 その後も出社しなかったため、普通解雇した。
→従業員は、業務状況の報告を適切に行わず、上司からの打合せの要請を拒否していたほか、会社からの面談や体調確認の求めも拒否し続ける状況にあった。また、会社は、在宅勤務の取扱いに関する規程において、在宅勤務の対象者は、在宅でも円滑に業務遂行でき、出社して業務に従事する際と同等の成果が出せるなどの一定の要件を満たす者として会社が認めた者とし、職場及び業務の運営上、在宅勤務の継続が困難な事態が生じた場合には、在宅勤務を取り消すことがあるとしていた。これらに照らすと、会社が在宅勤務取消を行ったことに不合理な点はない。そして、その後も、従業員は、会社との間で必要最低限の意思疎通もとれない状況であったから、解雇には客観的合理的理由があるし、正当な理由なく欠勤した期間や連絡拒絶の態様に照らすと、解雇が社会通念上相当性を欠くものとは認められない。従業員は休職を経ずに解雇したことは合理的な理由を欠くなどと主張するが、従業員が提出した診断書の内容は、文面上、会社が就業規則で定める休職の要件(業務外の傷病により半月以上欠勤するも、なお引続き1ヶ月以上休業を要すると認められるとき)を満たすものとは直ちには認められないところ、従業員が主治医への事情確認に協力する姿勢を示さず、会社において休職の要件を満たすことの確認ができなかった経緯を踏まえると、休職を命じなかったからといって、解雇が合理的理由を欠くとはいえない。解雇有効と判断。
出社を拒否する従業員への対応については以下の記事で解説していますので併せてご参照ください。
https://kigyobengo.com/media/useful/1883.html
真偽不明なパワハラ主張やメンタル不調の主張を繰り返して出社しない従業員への対応として参考になる事案です。
会社は真偽不明なパワハラ主張をして業務状況を報告しない在宅勤務社員に対し、以下の手順で対応しています。
上司からの出社要請
→書面により、出社をすること及び体調不良の事情がある場合は診断書を提出することを求める
→在宅勤務許可を取り消し
→在宅勤務取消後も出社しなかったことなどを理由に10日間の出勤停止処分
→提出された診断書を作成した医師との面談への同意等を求める書面を送付
→その後も出社しなかったため、普通解雇
このような手順は適切だったと考えられます。 パワハラの訴えについては会社は調査する必要があり、事実なら職場環境を改善する必要がありますが、そうだとしても従業員として会社からの出社要請に応答すらしないことは正当化されません。
また、診断書が提出されているものの、「上司からのパワーハラスメントが原因で出勤しての労務ができない状態(ただし在宅勤務であれば就労は可能である)」と記載されているだけでは、休職要件を満たすとは言えません。主治医への事情確認に協力することもしない以上、休職を経ずに普通解雇することも認められるとした裁判所の判断は参考になると思います。





