判例・裁判例コラム

会社が労災の事業主証明を途中から拒否するようになったのは不法行為?

大阪地裁R6.9.12
派遣社員がうつ病を発症し、これが派遣先でのパワハラ等によるとして労災に休業補償給付を請求した。
派遣元は、最初の請求では業務起因性を認めて事業主証明に応じ、労災が認定された。
しかし、その後、派遣社員が弁護士をつけて、派遣元に安全配慮義務違反を理由とする損害賠償請求したところ、派遣元は態度を変更し、以後、派遣社員が休業補償給付を請求しても、事業主証明を拒否した。
派遣社員はこれが債務不履行または不法行為であり、派遣元は事業主証明を拒否したことについて損害賠償責任を負うと主張した。
→事業主は、災害の原因及びその発生状況を証明すべきところ(労働者災害補償保険法施行規則13条2項)、派遣元は、当初は休業補償給付請求について業務起因性を認めながら、その後にこれを否定しており、対応が一貫していない。
しかしながら、派遣元が、労働者からの損害賠償請求を受けて、改めて調査した結果、業務起因性がないとの結論に至り、それ以降の業務起因性の証明を拒否したとしても、このような対応が違法とまではいえず、債務不履行又は不法行為に当たるとは言えないと判断

従業員から労災申請があった場合の会社対応の注意点については、以下で解説していますので併せてご参照ください。
https://kigyobengo.com/media/useful/2593.html

従業員がパワハラによる労災を主張している場合でも、会社が調査したうえでパワハラが確認できなかったときは、災害の原因及びその発生状況についての事業主証明はすべきではありません。
この事案では、事業者は、当初は業務起因性を認める事業主証明をしていました。
しかし、従業員からの損害賠償請求を受けて改めて調査を行った結果、態度を変え、事業主証明を拒みました。裁判所は、このような対応も違法とはいえないとしました。
また、裁判所は「事業主が一旦認めた業務起因性を民事訴訟で争うことが直ちに不当ともいい難い。」とも判示しました。 この事案では、労基署は労災を認定しましたが、裁判所で事業者が争った結果、パワハラの立証は不十分とされ、裁判所は、事業者に対する損害賠償請求を認めませんでした。

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