判例・裁判例コラム

退職金規程の不備で敗訴? ー医療法人職員による退職金請求をめぐる大阪地裁の判断事例

大阪地裁R7.9.26
医療法人に雇用された従業員が雇い入れから1年後に法人から奨学金の貸付を受けて、看護専門学校の准看護科に通学を開始。3年間通学して卒業し、卒業から4年後に法人を退職した。
退職金の算定にあたり、法人は看護専門学校に通学していた3年間は勤続年数に算入されないと主張。
これに対し、従業員は、通学期間も授業終了後の午後5時から午後7時の時間帯に勤務し、授業がない日はフルタイムで勤務していたから、その期間も勤続年数に算入すべきと主張した。
→法人は、退職金規程において、「自己の事由による欠勤および休職者のその期間は、退職基準計算期間より除外する」と定めており、看護専門学校の通学期間について、自己の事由による欠勤期間であると主張する。
しかし、法人は就業規則の「教育」の章において、「病院が業務上必要と認めた場合には、看護等の専門学校に通学させる。本制度により入学した職員が在学期間中の奨学金等については、病院と職員は個別の奨学金契約を結ぶものとする。」と定めている。同条によれば、病院が業務上必要と認めた場合に看護等の専門学校に通学させることになっているのであるから、通学は自己の事由による欠勤に該当するとは認められない。
また、従業員は、通学期間中も、授業後の時間帯や授業がない日に病院で就労していたことが認められるから、この点においても、自己の事由による欠勤に該当すると認められない。
通学していた3年間も退職金算定における勤続年数に算入されると判断。
※個人的な感想
中退共などを使わない自前退職金については、どう設計しようが、基本的には事業者の自由です。
ただ、個人的な感想としては、通学期間も通学しながら働いていたのだから、その期間について、退職金の支払から外したいというのは、ちょっとケチであまり共感できないなと思いました。
一方で、長期の海外留学制度があるような会社で、留学期間中全く勤務しないのであれば、その期間は退職金の支払から外したいということはありうるところであり、その場合、本件の退職金規程や就業規則のような問題がないようにする必要はあると感じました。

飲食店経営会社が勤務中に販売用ビールの飲酒を繰り返したレストラン職員を懲戒解雇!解雇は有効?大阪地裁の判断!前のページ

ピックアップ記事

  1. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
  2. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  3. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  4. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  5. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    人事考課について会社は広範な裁量があるのか?

    東京地裁R7.2.17大手マーケティング会社が、月例給与の改定率を、…

  2. 判例・裁判例コラム

    適応障害による休職からの復職にあたり賃金を減額した事案

    東京地裁R5.12.28適応障害による休職からの復職にあたり、賃金が…

  3. 判例・裁判例コラム

    勤務中の読書に対する叱責はパワハラ?東京地裁の判断

    東京地裁R5.12.7 電機製品販売会社の従業員が就業時間中…

  4. 判例・裁判例コラム

    セクハラ被害の訴えと休職期間の満了

    東京地裁R6.11.14食品販売会社が精神疾患で休職していた…

  5. 判例・裁判例コラム

    通勤中に立ち寄ったコンビニで転倒して負傷した場合の労災請求

    東京地裁R6.6.27出勤途中で立ち寄ったコンビニ内で転倒し、腰椎捻…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    鳥取地裁R6.2.16
  2. 判例・裁判例コラム

    入社前に雇用契約書を作成すれば、試用期間2か月→雇用期間2か月に変更できる?
  3. 判例・裁判例コラム

    総合職にのみ社宅利用を認め、一般職には認めないことは間接性差別?
  4. 判例・裁判例コラム

    会社の安全配慮義務。どこまでやれば履行したといえる?福井地裁の判断
  5. 判例・裁判例コラム

    試用期間中に2回の事故を起こし、ミスも改善されない従業員を実働10日で解雇した事…
PAGE TOP