判例・裁判例コラム

明るく真面目だった警察官が3か月の追及型指導の末に自殺。 県の責任は?宮崎地裁判決

宮崎地裁R8.1.30
勤続6年目の警察官が警備課に配属。
明るく真面目な性格で業務にも積極的に取り組んでいた。
一方、書類作成は苦手で、誤字脱字、内容や構成の問題をたびたび指摘されていた。
【平成30年春〜秋】
新しい課長の下で、誤字脱字や書類整理について繰り返し指導を受ける。
10月頃から、
・誤字脱字の箇所を具体的に指摘せずに「全部自分で見直せ」という指導
・同じミスについて繰り返し長時間指導
が始まった。
【平成30年11月】
県警本部への報告が必要な事案が発生。
本人は当直明けだったが、夜まで報告書作成を命じられ、課長から断続的に約2時間にわたり指導を受けた。
この頃から様子が変化。
・顔色に覇気がなくなる
・口数が減る
・課内の談笑に加わらなくなる
・書類整理もさらに滞るようになった。
ノートに、「死にたい」などと記載。
【平成30年12月】
実家で突然体が震え始める。
父に「仕事を辞めたいと思ったことはないか」と尋ねた。
その後、警備課内に泊まり込んで書類作成を続け、母から渡された精神安定剤を30錠以上服用。
高熱で呂律が回らず、足元もふらつく状態となり、病院へ搬送・入院となった。
【平成31年1月】
職場復帰後に課長が個人面談を実施。
業務負担軽減のため、しばらく庶務業務を中心につかせた。
また、産業医及び保健師によるカウンセリングを紹介した。
本人はカウンセリングで、
「課長との人間関係に悩んでいる」
「高圧的で3、4時間の説教はざら」
などと話し、
妻に対しても、
「もう課長がたまらん」
などと電話で話していた。
その後、メモ用紙に
「楽になりなさい」
「今日が最後」
などと記載。
2日後に自宅で自殺しているのが発見された。31歳。
両親が県に対して損害賠償請求訴訟を提起
→本件警察官はおそくとも、平成30年12月にはうつ病を発症していたと認められる。
そして、これは、課長のパワーハラスメント及び同期間の長時間労働に起因するものといえるから、その是正を怠った県の安全配慮義務違反とうつ病発症との間には、相当因果関係が認められる。
また、自殺についても、平成31年1月以降の負担軽減措置をもって因果関係を否定するに足りるものではなく、因果関係が認められる。
県は、本件警察官が心療内科の受診、異動又は転職等をして自殺を回避することができたのにこれをせず、家族が説得してこれらの対応を取らせるべきだったのにこれをしなかったとして、過失相殺又はその類推適用により、損害額を減じるべきであると主張するが、そのような主張は採用できない。
県に損害賠償命令。

課長は3か月後に対応を変え、負担を軽減しようとしたようですが手遅れでした。健康な人が3か月でこのような事態に至ることがあるというのは、肝に銘じておくべきことだと思います。
指導の必要がある場合でも、「厳しい指導」と「長時間労働 」が重なると非常に危険です。
上司の側としては、必要な指導をしているつもりであっても、このような結果に至り得ます。
指導自体が負荷になることを踏まえて、指導期間中は、他の負荷(時間外労働や連続出勤による負荷)はなくすことが必要です。

使用者の安全配慮義務については以下で解説していますので、併せてご参照ください。
https://kigyobengo.com/media/useful/3983.html

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