判例・裁判例コラム

71歳の母親と28歳の妻、2歳の長女と同居している従業員に単身赴任となる転勤を命じ、拒否したため懲戒解雇した事案

最高裁S61.7.14
大卒営業担当者に対し神戸から名古屋に転勤命令。営業担当者は、大阪府内で71歳の母親と28歳の妻、2歳の長女と同居しており、転勤に応じると単身赴任になるとしてこれを拒否した。会社は懲戒解雇。
→①会社の就業規則には、業務上の都合により従業員に転勤を命ずることができる旨の定めがあり、②会社は全国に営業所をおき、営業担当者の転勤も現に頻繁に行っており、③採用時に勤務地を限定する合意もされていないから、会社には転勤を命じる権利がある。その場合も、転勤は、労働者の生活関係に少なからぬ影響を与えるから、転勤命令権の濫用は許されないが、①転勤命令につき業務上の必要性が存しない場合、②転勤命令が他の不当な動機・目的をもってなされたものであるとき、③労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等、特段の事情のある場合でない限り、転勤命令権の濫用にはならない。本件では転勤命令に業務上の必要性があり、転勤による家族生活上の不利益は通常甘受すべき程度のものだから、転勤命令は権利の濫用にはあたらない。

☆配転命令についての重要判例である、昭和61年の東亜ペイント事件最高裁判決を確認のためにpostしました。東亜ペイトン事件は転勤命令拒否の事案でした。

パソコンの共有フォルダに保存した就業規則の効力前のページ

退職後6か月間、半径2キロ以内での独立開業を禁止する競業避止規定の効力次のページ

ピックアップ記事

  1. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
  2. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  3. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  4. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  5. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    解雇事由調査のための休職命令と賃金支払義務

    東京地裁R3.5.28会社が解雇理由の調査のために従業員に休…

  2. 判例・裁判例コラム

    過半数代表選出にあたり無投票者は有効投票にみなすと定めた場合の効力

    松山地裁R5.12.20大学が過半数代表者選出規程に、信任投票で投票…

  3. 判例・裁判例コラム

    住民票記載事項証明書の不提出を理由とする解雇の有効性

    東京地裁R6.9.25会社が自社が雇用した清掃作業者に再三にわたり住…

  4. 判例・裁判例コラム

    労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例

    宮崎地裁R6.5.15平均月56時間の時間外労働をしていた係長が突然…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    裁量労働制であれば生活リズムが整っていなくても復職できる?
  2. 判例・裁判例コラム

    レジから2000円をとった美容師の普通解雇
  3. 判例・裁判例コラム

    アルバイトをシフトに入れなかった使用者の責任
  4. 判例・裁判例コラム

    雇用契約書に明記した固定残業代の主張が認められなかった事例
  5. 判例・裁判例コラム

    会社が労災の事業主証明を途中から拒否するようになったのは不法行為?
PAGE TOP