判例・裁判例コラム

夏季休暇が「休日」なのか「休暇」なのか、が争点になった裁判例

東京地裁H30.7.18
就業規則で土日祝と年末年始を所定休日と定めている事業者が、7月から9月の間に3日間の夏季休暇を付与。
→裁判所は、これは「休暇」(労働契約上労働義務のある労働日について労働者が使用者から就労義務の免除を得た日)であって、労働者が労働契約上労働義務を負わない日である「休日」と区別されるとし、所定休日日数に含まれないと判断。

夏季休暇が「休日」なのか「休暇」なのか、が争点になった裁判例です。残業代請求の訴訟では、休日か休暇かが割増賃金の計算に影響します。休日であれば所定労働日数に含まれないので、休日が増えると割増賃金の分母が小さくなり、割増賃金計算の際の基礎賃金単価があがります。一方、休暇であれば所定労働日数には含まれるので、割増賃金計算の基礎賃金単価に影響しません。そのため、休日と判断された方が割増賃金の額は高くなります。
また、「休日」なのか「休暇」なのかは、労働基準法35条の毎週少くとも一回の休日、または四週間を通じ四日以上の休日を付与する義務が果たされているかどうかの判断にも影響します。

パソコンの共有フォルダに保存した就業規則の効力前のページ

退職後6か月間、半径2キロ以内での独立開業を禁止する競業避止規定の効力次のページ

ピックアップ記事

  1. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  2. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  3. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…
  4. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
  5. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)

関連記事

  1. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)

    判例・裁判例コラム

    就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)

    事件の概要給与規程において、「業務内容の変更に伴い、その業務…

  2. 判例・裁判例コラム

    懲戒処分前の弁明の機会付与に従業員側弁護士を同席させる義務はある?

    東京地裁R5.5.24懲戒解雇にあたり従業員に弁明の機会を付与。従業…

  3. 判例・裁判例コラム

    日報を提出しない従業員に対するけん責処分

    東京地裁R6.5.30営業所長の再三の提出指示にもかかわらず、営業日…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    自分自身が納得することを最優先し、会社業務への支障を生じさせる従業員の解雇
  2. 判例・裁判例コラム

    会社が労災の事業主証明を途中から拒否するようになったのは不法行為?
  3. 判例・裁判例コラム

    業務命令に応じない従業員への対応事例
  4. 判例・裁判例コラム

    暴力を伴うパワハラについて被害者の復帰までに加害上司を配置転換する義務があったと…
  5. 判例・裁判例コラム

    役付手当を固定残業代と位置付ける賃金規程の効力について判示した事例
PAGE TOP