判例・裁判例コラム

代表者からトラブルを問いただされて出勤しなくなった従業員。退職済みと扱ってよい?東京地裁の判断

東京地裁R5.3.28

運送業者に運転手として雇用されていた従業員が会社に対して雇用契約上の権利を有する地位の確認とバックペイの支払を求めた。会社は、この運転手について、搬送先のガードマンに暴言を吐くトラブルがあったと聞いて代表者が問いただした際に、運転手が「もう勤まらない。」と発言しため、代表者が「勤まらないのであれば、私物を片付けて。」と返答したところ、貸与された携帯電話と健康保険証を置いて事務所を立ち去り、翌日以降出勤しなかったと主張。これにより運転手は退職済みであると主張した。
→問いただされたことに憤慨した運転手が、自暴自棄になって発言したものとみるのが自然であり、辞職または退職の意思をもって発言したものとみるのは困難。また、健康保険証等を置いて事務所を去り、翌日から出勤しなかったとする点も、代表者の「勤まらないのであれば、私物を片付けて。」との返答を解雇と捉えた運転手がとった行動とみて何ら不自然ではない。運転手がその約3週間後に、会社に解雇予告手当の支払などを求める書面を送付していることもこれを裏付けるものといえる。運転手が辞職または退職合意申込みの意思表示をしたということはできない。雇用契約上の権利を有する地位にあることを確認し、バックペイの支払命令

退職届は必ずもらえ!というのが常識ですが、実際にはポストのような場面で放置してしまう会社もあるように思いました。健康保険証等を置いて帰ったり、有給を全部消化する届が出てたりしても、それは解雇であっても同様の行動をとることは合理的ですから、必ずしも労働者が自らの意思で退職したことを示す事実になりません。決して放置してはならないわけですが、では具体的にどうすればよいかということについては、まったく事案が違いますがコメント欄の裁判例などが参考になります。また社労士会の講演などでも取り上げたいと思います。

参考裁判例:
https://nishikawa-lawyer.com/414/

タイミー利用者が他社でのダブルワークを理由に割増賃金を請求!東京地裁の判断前のページ

復職可否の診断書が障害年金診断書と矛盾!東京地裁の判断次のページ

ピックアップ記事

  1. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  2. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  3. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  4. 就業規則に降給の規定を置けば給与の減額は可能?(東京地裁R5.12.14)
  5. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    1000円の着服をした運転手の退職手当1200万円超を全額不支給にした事案

    最高裁R7.4.17京都市交通局に勤務するバス運転手が運賃1000円…

  2. 判例・裁判例コラム

    65歳以降の従業員の雇止めは65歳までの雇止めとどう違う?

    東京地裁R7.3.11 道路工事会社が定年後65歳までは再雇…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    スマホの位置情報を示すGooglemapのタイムライン記録を証拠に残業代を請求さ…
  2. 判例・裁判例コラム

    東京地裁R7.5.23
  3. 判例・裁判例コラム

    引越し会社で特定の作業をこなした場合に支給される業績給は労基法施行規則19条6号…
  4. 判例・裁判例コラム

    携帯電話の位置情報に基づいて割増賃金請求できる?会社側の反論事例。
  5. 判例・裁判例コラム

    横浜地裁R3.11.30
PAGE TOP