判例・裁判例コラム

無断で直行直帰を繰り返す職員!“減給処分”はやりすぎ? -東京地裁が処分は無効と判断した2つの理由

東京地裁R7.4.25
現場に直行または現場から直帰する際は会社に申請するように求められていた職員が、指導にもかかわらず、無断で直行直帰を繰り返した。会社はこの職員に対し、減給の懲戒処分
→会社が職員に通知した処分理由のうち、令和4年6月1日に事前に申請なく直帰した事実は認められる。これは就業規則に定める懲戒事由である「報告を疎かにした、又は虚偽の報告を行ったとき」にあたる。
しかし、就業規則で、懲戒は、譴責、減給、出勤停止、降格降職、諭旨解雇の順に段階的に行うものであり、すでに懲戒をしたのに、改悛の見込みがなくかつ繰り返す場合には上位の懲戒を行うことを原則とすると定めている。また、令和4年6月1日に申請なく直帰したことは、規律維持に悪影響を与える行為だが、直接的に損害を発生させる行為とはいえない。令和4年6月1日に申請なく直帰したことは、これが繰り返された同種行為の一つだとしても、懲戒歴がなかった職員に対し、より軽い譴責という選択肢もあるのに、例外的に直ちに減給とするような重大性があるとはいえない。
加えて、就業規則では、懲戒処分の際は、処分の内容、非違行為、懲戒の事由等を懲戒処分通知書で通知することを定めている。この点、会社は、「業務命令として再三にわたり注意・指導したにも関わらず、正当な理由なく頻繁に業務上の指示又は命令に従わないため」、「2022年6月1日直行直帰 無届他多数」として、減給処分を通知しているが、このような通知は、減給の金額の記載がない。また、非違行為、懲戒の事由についての記載も、令和4年6月1日の直行直帰の点を除くと具体性を欠く。職員が業務上の指示又は命令に従わず、無届の直行直帰を多数したという漠然とした認識のもとに、適切な検討を欠いたまま処分の種類や程度が定められた疑いが残る。減給処分は無効と判断。
※画像はこの事案の就業規則からの抜粋です。

減給処分というと労基法で減給の上限も設定されていて、軽い処分と考えがちですが、けん責を飛ばしていきなり減給処分をすることを問題視する裁判例は、ポストの例のほかにもいくつかあるので注意が必要です。例えば、https://nishikawa-lawyer.com/1372/ の事例でも、けん責を飛ばして減給処分をしたことが問題と指摘されています。
そのほか、ポストの事例では、裁判所が指摘しているとおり、懲戒対象事実の特定が不十分だったという問題がありました。
また、就業規則で、懲戒は、譴責、減給、出勤停止、降格降職、諭旨解雇の順に段階的に行うものであり、すでに懲戒をしたのに、改悛の見込みがなくかつ繰り返す場合には上位の懲戒を行うことを原則とすると定めていたことも、減給処分が無効とされる一因となっています。非違行為の軽重も様々であるため、このような規定は、「原則とする」という留保付きであってもおくべきではないです。

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