東京高裁R8.1.22
銀行が職員を管理職層から、非管理職層に降格させ、これに伴って給与を月額75万6500円から月額59万4000円に減額。
第一審はこの減額は就業規則に基づくもので有効と判断。職員が控訴した。
→銀行は、就業規則上、各行員の役割を等級に分類・序列化し、年1回の人事考課に基づき、各行員の役割の見直しを行い、これに応じて等級・号俸を見直すと定めており、本件の降格は、労働契約上の根拠を有する。
また、等級・号俸を定める前提となる人事考課についても、手順を定めた手引きが行員に公開され、各行員は、期ごとの目標を自ら設定して上司と共有し、上司との間で目標達成の進捗状況を確認する中間レビューを経て、年度末時点の達成状況について7段階の最終評価を受けると明示されていた。
以上の事情に照らせば、本件減給は、労働契約上の根拠を有する。
ただし、使用者に委ねられた裁量の範囲を逸脱又は濫用した場合には、人事権の濫用として、降格は無効となる。
本件では、銀行は人事制度の説明資料において人事評価が2年連続「3-」以下となった場合に降格の検討対象とすると説明しており、管理職の人事評価が「1」であった場合に2年を待たずに直ちに非管理職へ引き下げるなどの取扱いがされる可能性があるとの説明は何らしていない。
本件の職員は、令和元年度は総合評価「3」、令和2年度は総合評価「1」であり、令和2年度の評価のみをもって降格をすることは、銀行自らが定めた上記基準に合致しない。
また、総合評価が「1」とされた令和2年度の評価の手続についても、目標設定にあたり、上司が、何らの説明もされていない「総合年間プラン」を企画立案する旨の目標を記載した上、これを最終版として行内システムに入力するよう指示したことが認められる。これに対し、職員が「年間総合プラン」のイメージがわかないため指標を教えて欲しいなどとメールしたが、上司はこれに回答せず、個別目標達成のための中間レビューも行わなかった。
確かに、職員がやや頑なな態度をとっていたことが認められるが、職員が上司が示した最終案を行内システムに入力しなかったからといって、また、上司と職員の間の関係が悪化していたからといって、人事評価の重要な手続である中間レビューを実施せず、放置してよい正当な理由にはならない。
また、上司は、定例ミーティングで報告された職員の業務について、何らかの指導をしたり、サポートをするためのアドバイス等もしなかった。
さらに、職員が、令和元年度に比べて、その能力・実績が格段に低下した様子もうかがえない。
以上によれば、銀行には、人事評価について広い裁量があることを考慮したとしても、令和2年度の評価が「1」であるとの評価が適正なものであったとは認められない。
よって、本件の降格は、人事権の濫用に当たり無効であり、降格がされたことを理由とする減給も無効であると判断。
この事案では、就業規則は丁寧に作り込まれており、就業規則の作り方の面では参考になる事例です。リリース予定の咲くや社労士実務研修サービスでもとりあげようと考えています。
一方で、個別評価にはさまざまな問題がありました。
例えば、中間レビューについて、
・上司が部下と関係が悪いことを理由に、中間レビューを実施しなかった。
・目標達成のための助言や支援も行わなかった。
といった問題がありました。
裁判所は、上司と職員の間の関係が悪化していたからといって、人事評価の重要な手続である中間レビューを実施せず、放置してよい正当な理由にはならないとしています。
上司と部下の関係が悪化し、適切なフィードバックや評価ができなくなってしまっている事案は西川もときどき経験します。
本件の中間レビューの目的は、業務の改善にあるので、評価が低くなりそうな社員ほど、中間レビューは重要になります。関係性が悪いから実施しづらいとういのは、心情としては理解できますが、制度論からすれば、むしろ「問題がある」、「関係が悪い」「評価でもめそう」という場合ほど、丁寧に行い、その記録を残すことが必要です。また、単に評価するのではなく、目標達成を支援する姿勢で対応することが重要になります。





