東京地裁R8.3.26
経理部の従業員が同僚との関係悪化を訴え、うつ状態と診断されて、第1回休職開始。
復職にあたり、経理部を避けたいという従業員の希望により、会社は「メール室業務」をこの従業員のために新設して担当させた。
しかし、メール室業務でも以前の経理部同僚からクレームを受けた。そして、会社が翌年からメール室業務をこの従業員の一人体制にすると通知したことを受けて、従業員は不安を訴え、再度休職を開始。
約3年弱の休職後、再度復職を検討するにあたり、主治医は「人との接触が少ない仕事が望ましい」と診断書に記載。
会社はメール室業務への復職を前提とした復職案を提示したが、従業員はメール室業務100%の復職に難色。そこで、会社はメール室業務のほか3業務を加えた4業務での復職を提案。しかし、従業員はメール室業務が含まれることに拒絶反応を示した。
会社はこれ以上の業務提案は困難と回答。従業員は人事部業務等の代替案を自ら提案し、復職願を提出したが、会社は休職期間満了により解雇した。
→従業員はメール室業務に拒絶反応を示しており、主治医の判断としてもうつ状態はあくまで改善傾向だったにとどまるから、メール室業務への復帰が直ちに可能な状態であったとは認められない。
一方で、会社は従業員数約600名で10個の部門が存在。本社ビルにおいてもフロアの形状から、従業員の配席などはある程度柔軟に行える状況だった。また、従業員は役職者ではなかった。これらの点を踏まえれば、会社は、この従業員に他部署において就業可能な業務がないかを検討する必要があったといえる。そうであるにもかかわらず、4業務の提案をしたほかに、従業員が就業可能な部署を検討していない。
従業員が自ら提案した人事部での手伝いに関しては、経理部での知識、経験を生かせる業務が存在したことがうかがわれる。また、経理部も、他部署と比べて相対的に人との接触が少なく、かつ、従業員のこれまでの知識、経験を生かせる部署でもあった。過去の経理部の同僚との接触による病状の悪化を会社が懸念するのは当然ではあるものの、配置や配席、業務の遂行方法などにより接触を回避する措置を講ずることも不可能とはいえない。 さらに、経理部に限らずとも、他の部署において、相対的に人との接触が少なく、かつ、従業員の経理の知識、経験を生かせる業務を検討することは可能であった。
メール室業務以外の業務で復職は可能であり、解雇は無効。雇用契約の継続を判決で確認し、バックペイ1300万円超の支払命令。
企業側から見たポイント
なかなか厳しい判断ですが、
私傷病休職からの復職可否判断の失敗事例として学ぶべき点も多いと感じました。
本件の経緯をみると、
第1回休職2年半
→この従業員のためにメール室業務をわざわざ作る配慮をして復職させたが約1年後に欠勤開始
→第2回休職3年
→第2回休職からの復職時も従業員にあわせて4業務での従事を提案していた
となっています。
会社は、休職期間満了の約2か月半前に、4業務の提案をして従業員に断られた後も、組合との団体交渉に応じ、産業医面談を実施するなどしていました。また、法務部での配置可能性についても検討していました。
このような会社の努力からすれば、判決は会社に厳しすぎるとも感じるところです。
しかし、従業員から人事部での就業の希望があった以上、この点についても実質的な検討をすべきでした。
また、休職期間満了までの約2か月半の回復状況も踏まえたうえで、休職期間満了時点での復職可否を判断する必要があったといえるでしょう。





