京都地裁H28.3.29
大学が教員を採用。
勤務開始から約2年が経ったころに、教員はアスペルガー症候群と診断されていることを大学学部長に伝えた。
教員は、勤務開始約3年半後に、軽微なミスをしたにすぎない生協職員に罵声を浴びせかけ、土下座させるトラブルを起こしたが、大学はアスペルガー症候群に由来するものであり、注意するとかえって深刻化するとして、精神状態が安定するのを待つ方針を採った。
その後も、教員が他の教員との接触がストレスだとして教員会議に出席できなくなったことから、教員の要望に応じて教員会議で診断書の内容を読み上げ、隔週で開催される教員会議の翌日に、その内容を教員に報告する機会を設けるなどの対応をしていた。
しかし、その後、教員が
①学生から暴力を振るわれたとして、大学関係者に相談なく警察に通報し、告訴する、
②大学病院に来訪してカウンター前でリストカットして銃刀法違反容疑で現行犯逮捕される といったトラブルが発生。
さらに、教員の配偶者は、大学管理職からの直接の接触がストレスとなり、教員の病状を悪化させるおそれがあるとして、接触を避けるように求めた。
これにより、大学の学部長は、通常の職務上の事項でさえ、教員との意思疎通が困難になり、対応してきた管理職等も疲弊し、配慮は限界であると判断。
大学は教員を解雇した。
→一般的には問題があると認識できる行為でも、この教員においては、アスペルガー症候群によって当然にその問題意識を理解できるわけではないという特殊な前提がある。
大学は問題とする行為について全く指導しておらず、教員に改善の機会を与えていない以上、教員に改善する可能性がなかったと即断することはできない。
また、大学側が、問題行動の背景にアスペルガー症候群があることを前提に解雇事由を審査したり、必要な配慮について教員の主治医に問合せを行ったりしたことはない。
さらに、アスペルガー症候群の労働者に適すると一般的に指摘されているジョブコーチ等の支援を含め、雇用を継続するための具体的方策を検討した形跡すらなく、配慮が限界を超えていたと評価することは困難である。
解雇無効と判断。
地位確認請求を認容し、約1500万円の支払命令。
障害のある職員に対する配慮についての考え方が「使用者」と「裁判所」では違っていたことが、使用者敗訴の原因です。
本件では、大学は教員がアスペルガー症候群と診断されていることを踏まえ、教員の問題行動に対して直接注意することを控え、教員会議の運営についてもできる限り教員の要望を受け入れるなど、様々な対応を行っていました。
しかし、裁判所は、むしろ、一般的には問題があると認識できる行為でも、アスペルガー症候群によって当然にその問題意識を理解できるわけではないという特殊な前提があるとしたうえで、問題行動について全く指導せず、改善の機会を与えないまま、解雇したことを、解雇無効の理由としてあげました。
「注意しないことが配慮である」と考えた大学と、「障害の特性に応じた方法で具体的に指導し、改善の機会を与えることこそが配慮である」と考えた裁判所の認識の違いが、大学の敗訴につながったといえます。
障害の特性を踏まえて理解しやすい方法や伝え方を工夫しながら、問題となる行動について具体的に説明し、改善の機会を与えることが必要でした。
障害者の解雇については以下で解説しています。
https://kigyobengo.com/media/useful/3016.html





