判例・裁判例コラム

ジョブ型雇用における能力不足解雇

東京地裁R4.2.2

欧州連合が日本で広報担当者を雇用したが、上司から指示された業務の期限に遅れることを繰り返し、また上司への報告を怠る、事実と異なる回答をするなどの問題があったため、普通解雇
→就業規則所定の「職務の遂行において不適格である」の解雇事由に該当し、解雇の客観的合理的理由が認められる。
これに対し、従業員は、業務遂行能力に問題があったとしても、解雇に先立ち配置転換、譴責、降格等を行うべきであったと主張する。しかし、職種及び業務内容を定めて雇用契約が締結されており、遂行能力に問題がある場合に配置転換を行うことは想定されていない。また、募集要項において2年以上のウェブサイト管理の経験を含む5年以上の実務経験があることが応募条件とされていたことや、給与額が高額であること等の事情も考慮すれば、従業員には高度な専門性に加え、組織内の秩序に従い他の職員と協働して業務を行う高い能力が求められていたというべきであり、指導等による改善が想定されていたとはいえない。そして、使用者は解雇に先立ち繰り返し、注意、指導を行っており、従業員の職務遂行への不適格性は重大な程度に達していたことからすれば、従業員に対して懲戒処分等の措置をとることにより、職務遂行能力の改善が期待されるとも認められない。解雇有効と判断。

試用期間中に逮捕・勾留された従業員を解雇した事案前のページ

ジョブ型雇用における能力不足解雇次のページ

ピックアップ記事

  1. クレーム発生や不規則勤務・時間外労働がある場合の突然死は過労死?(宮崎地裁R6.…
  2. 労働時間を自己申告させていた会社における安全配慮義務違反の判断事例(宮崎地裁R6…
  3. 業務命令に応じない従業員への対応事例(東京地裁R5.11.15)
  4. 232名が一斉に退職前の有給消化を申請した場合に時季変更権行使が認められる?(大…
  5. 【フリーランス保護法対応セミナー】契約書ひな形や支払サイトの見直し、相談窓口の整…

関連記事

  1. 判例・裁判例コラム

    クリニックに勤務する麻酔科医の呼び出し待機時間は労働時間?

    大阪地裁R7.3.24麻酔科医がクリニックから、就業時間外も、クリニ…

  2. 判例・裁判例コラム

    就業規則に休職期間の延長規定を設けた場合の効力

    大阪地裁R3.7.16社会福祉法人が就業規則で私傷病休職の期間につい…

  3. 判例・裁判例コラム

    正社員に寒冷地手当を支給するが契約社員には支給しないことは違法?

    東京地裁R5.7.20日本郵便が正社員には寒冷地手当を支給するが契約…

  4. 判例・裁判例コラム

    暴力・暴言繰り返す社員の解雇

    東京地裁R6.10.22上司の顔面をたたいて眼鏡を落下させる…

アーカイブ

  1. 判例・裁判例コラム

    賃金減額について定める給与規程の不備
  2. 判例・裁判例コラム

    年下の女性上司に不満をあらわにし、大声を出して机を叩くなどといった威圧的な態度を…
  3. 判例・裁判例コラム

    半期ごとの業績評価により賃金を最大2割減額する規定の効力
  4. 判例・裁判例コラム

    不備のある定額残業代を就業規則変更によって有効にできる?
  5. 判例・裁判例コラム

    会社が労災の事業主証明を途中から拒否するようになったのは不法行為?
PAGE TOP